「成功者K」羽田圭介著

公開日: 更新日:

 主人公は、小説家デビューして12年目に芥川賞を受賞した小説家K。ヘビーメタル限定カラオケ大会でメークをして歌っていたところに受賞の知らせが届き、そのメーク姿は一瞬にしてSNSで拡散された。

 その後、このメーク姿が面白がられてテレビのバラエティー番組に出演したのを契機に放映日から世界が一変。通りがかりの知らない人にあいさつされ、本を読んだこともなさそうな人からも声をかけられて、外出時には帽子やマスクが必須になった。次々出演依頼が舞い込むうち、本は売れに売れて数万部単位で増刷が決まる。それ以上に変化したのが女性関係で、サイン会で目をつけた美女に声をかけ次々関係を持つことに慣れていく。果たして、有名人生活を満喫し始めたKの運命は……。

 テレビへの露出で人生を一変させた小説家を描いた話題作。著者の体験をベースにした私小説風でもあり、あり得ないほどあけすけに描くことで物語に真実を紛れ込ませたフィクション風でもあり、読者を戸惑わせるギリギリの設定が心憎い。有名人をつくるテレビの力と、それに翻弄される人間の姿に考えさせられる。(河出書房新社 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ