「素敵な日本人――東野圭吾短編集」東野圭吾著

公開日: 更新日:

 近所の神社に初詣に出かけた夫妻が下着姿の町長を発見。すぐに警察に通報するが、なんともいい加減な対応の揚げ句、強引に犯人を仕立て上げようと夫妻に偽証を強要する。業を煮やした夫妻が、警察の見落としていたある事実を指摘する……というユーモアミステリー風味の「正月の決意」から始まる、全9編が収められた短編集。

 2作目の「十年目のバレンタインデー」は、10年前に突然姿を消した元カノから連絡を受け、いそいそと出かけていくミステリー作家を待ち受けていた衝撃の事実が明かされるという、変則的なリーガルサスペンス仕立て。続く「今夜は一人で雛祭り」は、地方の格式のある名家へ嫁いでいく一人娘の行く末を心配する父親の心情を描きながら、亡き妻が残した雛祭りの謎を解いていくという日常ミステリー。その他、近未来ミステリー(「レンタルベビー」)、本格ミステリー(「クリスマスミステリ」)といったさまざまな趣向が、季節の風物を織り込みながら描かれていく。

 円熟した味わいを堪能できる最新短編集。(光文社 1300円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発