著者のコラム一覧
クロキタダユキ

エル ELLE(2016年、仏国)

公開日: 更新日:

 白昼堂々のレイプシーンから始まるサスペンスの主人公は、被害者の女社長。幼少時、連続殺人を犯した父と一緒に殺人現場にいたことから、警察を嫌い、通報せず、自ら犯人捜しを決意する。まさかその勇ましい行動が、内に秘める“魔性”のベールをはぐキッカケになろうとは……。

 隣人のイケメンを窓から眺めながらオナニーしたり、過失を犯した部下に罰としてペニスを見せるよう強要したり。変態の限りを尽くす過程で、親友から「夫が浮気している」と告白される。続けざまに「帰宅後の夫のペニスに鼻をつけて、においを嗅いでやりたい」と。

 今回のセリフはそれにうなずいた言葉。その浮気相手が本人だから、ムチャクチャだ。

 全編通してセクハラが描かれているが、人間の本能が色濃く出ていて、官能的でありながら、ユーモアさえ感じるのは気のせいじゃない。ヒットメーカーのポール・バーホーベンがそう仕向けているのだ。

 妖しいシーンに引き込まれ、危ないセックスをしたくなる。それも、知らない女性と。監督の過激な要求を体当たりで演じているのは、国際派女優のイザベル・ユペール。アブノーマルでも、テンポがよく、ポップ。フランス映画ながらアカデミー主演女優賞にノミネートされたのも当然だ。

 監督は当初、ハリウッドで撮ろうとしたらしいが主役が見つからず、彼女に白羽の矢が。60代とは思えない迫真の演技で、情けない男も火がつくはずだ。

【連載】セリフ1つ読む映画

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷が佐々木朗希への「痛烈な皮肉」を体現…耳の痛い“フォア・ザ・チーム”の発言も

  2. 2

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 3

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い

  4. 4

    (1)身内すらも“監視し欺く”情報統制…機密流出犯には厳罰、まるで落合博満監督のよう

  5. 5

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった

  1. 6

    巨人に漂う不穏な空気…杉内投手チーフコーチの「苦言連発」「選手吊るし上げ」が波紋広げる

  2. 7

    ドジャース佐々木朗希は「ひとりぼっち」で崖っぷち…ロバーツ監督が“気になる発言”も

  3. 8

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  4. 9

    公明党が自民党総裁選に異例のドーカツ…「ポスト石破」本命の高市早苗氏&小泉進次郎氏に影落とす

  5. 10

    ぐっすり眠りたければ寝室のエアコン設定を25度超にしてはいけない