著者のコラム一覧
クロキタダユキ

汚れたミルク/あるセールスマンの告発(2014年・印、仏、英)

公開日: 更新日:

 貧しいパキスタン人アヤンは結婚後、ダメモトで受けた世界的飲料企業の採用試験に合格。持ち前の行動力でトップセールスマンに。

 だが、必死で病院に売り込んだ粉ミルクが原因で、多数の乳児が死亡している事実が判明。骨と皮だけで体中にチューブをつけられた乳児たち。そのシーンは実際の映像が流れ、胸が痛む。

 衝撃を受けた彼は、裕福な暮らしを捨て、辞職して会社を訴えるが、家族が危険な目に。葛藤する夫に妻が投げた励ましの言葉だ。

 巨大企業の不正に勇気をもって立ち向かう内部告発だが、劇中、上司の指示で取引先に日常的に賄賂や付け届けをして業績を上げていたことが分かる。しかも、被告の企業との金銭取引に応じようとしていたテープが発覚し……。

 くさいものにフタで、会社の汚点に目をつむっている人は、身につまされるだろう。正直、モヤモヤする。

 しかし、ボスニア出身の監督が焦点を当てるのはあくまでも主人公の人間だ。正義に奮い立っても、家族が脅され、取引に応じ、ストレスでヘロヘロになる姿を追う。人間の弱さと家族の強さをテーマにした映画と見ると、しっくりくる。

 同じくアジアやアフリカで強引に開発を進める中国の世界進出ぶりは、この映画とダブる。結局、被害者は弱者だ。不正を暴くのが正義だとしても、その行動は非常にリスキーだとつくづく思い知らされた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁