弟子の一之輔は本当に寄席が好き。寄席を休みたくないと…

公開日: 更新日:

「それがうれくてねえ」

 一朝は笛の名手としても知られ、歌舞伎座の囃子方として吹いていたこともある。さらに、夫人は5世片岡市蔵の娘さんで、現在活躍中の6世市蔵と片岡亀蔵は義弟に当たる。歌舞伎との関わり合いは後でたっぷり伺うとして、初めに一之輔のことを聞いてみた。

「21人飛び越しての抜擢真打ち昇進は、師匠として喜ばしいもんですよ。当時の落語協会会長、柳家小三治師匠のお声掛かりで、めったに若手を褒めない会長が珍しく褒めてくれた。昇進した年は真打ち披露興行や親子会で、あたしまで忙しくなりまして」

 当時一朝は、「今のあたしは一之輔バブルです」と言っていた。

「その通りでね。師弟がしょっちゅう一緒でした。最初の披露興行が鈴本演芸場で、一之輔が毎日ネタを変えるというから、あたしも変えた。『負けねえぞ』てなもんですよ。10日間で10席。次の末広亭でも毎日変えてたら、4日目に一之輔が、『もう勘弁して下さい』って言う。『師匠、大人げないですよ』だって(笑い)。こっちは、あいつが変えてるから倣っただけなのに、勝手に降参してきた」

 こういう師弟の張り合いは、芸人らしくてほほ笑ましい。

あの子は本当に寄席が好きなんです。寄席を休みたくないって言う。それがうれしくてねえ」

 寄席を大事にするのは一朝も同じである。=つづく

(聞き手・吉川潮)

▽春風亭一朝(しゅんぷうてい・いっちょう) 本名・浮ケ谷克美(うきがや・かつみ)。1950年、東京・足立区生まれ。68年、5代目春風亭柳朝に入門。73年、二つ目昇進、「一朝」と改名。82年、真打ち昇進。84年、国立演芸場花形演芸新人大賞受賞。86年、「若手花形落語会」で文化庁芸術祭優秀賞受賞。2013年、第30回浅草芸能大賞奨励賞受賞。20年、第70回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)受賞。落語協会所属。2月2日18時半から人形町の社会教育会館で独演会。2月14日、お江戸日本橋亭で「春風亭一朝を聴く会」開催。

【連載】春風亭一朝 大いに語る

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

  2. 2
    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

  3. 3
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

  1. 6
    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7
    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

  3. 8
    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

  4. 9
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  5. 10
    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮

    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮