志村けんさん追悼秘話<下>「初めて高級クラブに連れていってもらった夜、志村さんは“俺の弟子だよ”と…」

公開日: 更新日:

 その後、僕は「ギルガメッシュないと」など、徐々にタレントとしても活動させていただけるようになってきたんです。志村さんには「仕事が入ったときは、そっちを優先していいぞ」と言っていただいていました。

 それで25歳くらいの時、意を決して、「付き人をやめて、タレントとしてやっていきたいんです」と伝えました。怒られるかな~と思っていたら、「そうか、やっと言ってきたか」と言って認めてくださったんですよ。

 それから志村さんは優しくなりました。初めて六本木の高級クラブに連れてっていただいたのもその頃ですね。僕は、いつもその店の外で待っていたので、店に入るなり、「あ~、いつも外で待ってる人だ~」なんてからかわれたんですが、志村さんは、「バカ野郎、俺の弟子だよ」と言ってくださって。僕、うれしくてクラブのトイレで泣いちゃいました。それからですね、表立って「師匠」と呼べるようになったのは。

 30歳くらいのときには、温泉ロケの企画でご一緒させていただきました。旅館に着くと、玄関にハイヒールがいっぱい脱ぎ捨ててあって、志村さん、アドリブでそれを手にとり、クンクンにおいをかぎはじめたんですよ。一瞬、ひるんだ僕ですが、「ここは『何やってるんですか!』じゃないだろう」と思って、手にしたスリッパで、思いっきり頭をひっぱたいたんですよ。「パッコーン」って。そしたら志村さん「いった~い」って。周りは大爆笑です。

 突っ込んだ後、僕、手が震えていました。本気で突っ込んだのは、付き人になって以来、その時が初めてだと思います。

 ロケが終わって飲んでるときに、志村さんから「俺とおまえの(師匠と弟子という)関係を、みんな知っているから面白いんだ。よく知らない人が突っ込んだって笑えないだろ。あれでよかったんだよ」と言っていただきました。本当にうれしかったですね。

 志村さんも付き人時代に、ネタ会議でウンウンうなっているいかりやさんに、「早く決めろよ!」と頭を叩いて突っ込んだことがあったそうですが、それは相当、空気とタイミングを読まないとできないことです。一歩間違えれば大変なことになってしまう。僕はそれに10年かかったということですね(笑い)。

実の父親以上にお父さんのような存在

 独立してからも、数カ月に一度は、飲ませていただき、毎年のお誕生日会にも参加させていただいてました。最後にお会いしたのは、昨年2月22日のお誕生日会です。毎年、「山崎」のボトルを持っていくんですが、「芸がねえよなあ~」なんて言いながら、「おい、山崎開けようぜ。これ今、手に入れにくいんだろ」なんて言って飲んでくださいました。でも、僕がグラスにつぐと、「そんくらいでいいんだ、いいんだ」と、以前に比べてかなり薄めでしたね。しかし、直後にまさかあんなことになってしまうとは……。

 亡くなられた当日は、朝からラインが鳴りっぱなしで、僕、もう訳が分からなくなっちゃって。夕方にフジテレビで取材を受けたんですけど、あんまり記憶がないんですよ。

 僕にとっての志村けんですか? もちろん、生涯の師匠ですし、実の父親以上にお父さんのような存在ですね。今、僕も50をすぎましたけど、20歳前から、ずっとお世話になってましたから。

 今でも、「毎日、ひとつでもいいから何かネタを考えろ」と志村さんに言われたことを実践しています。志村さんがNHKでやられていた「となりのシムラ」のような、中年男性の悲哀を描いたコントをいつか僕もやってみたいなあ。ネタもほら(とスマホのメモを見せながら)、こんなにたまっているんです。 =おわり

(聞き手=平川隆一/日刊ゲンダイ

▽やまざき・まさや 1970年1月18日、横浜市生まれ。お笑い芸人、タレント。「ジョーダンズ」としてコンビ活動したが2007年解散。現在、J:COMチャンネル「デイリーニュース」でキャスターを務めるほか、横浜市内で「山下公園花火大会」「横浜銀蝿」「DeNAベイスターズ」関連の各種イベントの司会などでも活躍。 

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  1. 6

    嵐ラストで「500億円ボロ儲け」でも“びた一文払われない”性被害者も…藤島ジュリー景子氏に問われる責任問題

  2. 7

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択

  3. 8

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  4. 9

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 10

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    横綱・大の里まさかの千秋楽負傷休場に角界から非難の嵐…八角理事長は「遺憾」、舞の海氏も「私なら出場」

  3. 3

    2026年大学入試はどうなる? 注目は公立の長野大と福井県立大、私立は立教大学環境学部

  4. 4

    東山紀之「芸能界復帰」へカウントダウン着々…近影ショットを布石に、スマイル社社長業務の終了発表か

  5. 5

    「総理に失礼だ!」と小池都知事が大炎上…高市首相“45度お辞儀”に“5度の会釈”で対応したワケ

  1. 6

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  2. 7

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  3. 8

    義ノ富士が速攻相撲で横綱・大の里から金星! 学生相撲時代のライバルに送った痛烈メッセージ

  4. 9

    同じマンションで生活を…海老蔵&米倉涼子に復縁の可能性

  5. 10

    独立に成功した「新しい地図」3人を待つ課題…“事務所を出ない”理由を明かした木村拓哉の選択