著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「津田梅子~お札になった留学生~」明るくはなく苦みが強いドラマだったが…

公開日: 更新日:

 5日夜、スペシャルドラマ「津田梅子~お札になった留学生~」(テレビ朝日系)が放送された。主人公の津田梅(後年は梅子)は、明治期に女子英学塾(現在の津田塾大学)を創立した教育者だ。2024年に改刷される5000円札の肖像になることが決まっている。

 維新から間もない明治4年、わずか6歳でアメリカに留学。帰国は11年後の明治15年だが、梅(広瀬すず)はアメリカと比べて女性の地位があまりに低いことに驚く。当時、女性は結婚して子どもを産み、夫や家を陰で支えることが常識とされていた。アメリカ仕込みの英語、知識、自立する能力も身に付けた女性を十分に生かせるまでには社会が成熟していなかった。

 このドラマも決して明るくはない。いや、かなり苦みが強い。橋部敦子のオリジナル脚本は、ドラマとして重くなることは承知の上で、自身の能力を発揮する場を得られないことに苦しむ梅に寄り添っていく。同じく「新紙幣の肖像」である、渋沢栄一とは異なる先駆者像を見せてくれた。

 梅は25歳で再びアメリカに留学し、帰国後は女子教育にまい進する。「結婚していない女は何もできない」と言われた時代に生涯独身を貫いた。

 そんな梅を支えてくれたのが留学仲間の山川捨松(池田エライザ)や永井繁(佐久間由衣)。その友情物語がドラマにぬくもりを加えていた。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い