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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK「50年目の“独白”~元連合赤軍幹部の償い~」この内容で30分の放送はあまりに短い

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 半世紀前の1972年2月、連合赤軍による「あさま山荘事件」が起きた。その際に逮捕されたメンバーのひとりが吉野雅邦だ。2月24日に放送された、クローズアップ現代+「50年目の“独白”~元連合赤軍幹部の償い~」の主人公である。

 吉野は山岳ベースでの「リンチ殺人」にも深く関わっていた。しかし裁判では死刑ではなく、無期懲役が確定。この50年間、獄中にいる。逮捕時には23歳だった吉野も、現在は73歳だ。

 番組は、吉野が取材班に託した原稿用紙86枚の「手記」を軸に構成されていた。最も印象に残ったのは、「総括」という名の集団リンチ、大量殺人をめぐる文章だ。「自分の頭で考えると非組織的、反革命的になってしまうと思い込み、思考停止を決意」したとある。

 しかし、殺害された仲間の中には、吉野の子どもを宿した妊娠8カ月の妻もいたのだ。命がけで守るべき人を守らなかった事実を含め、果たして「思考停止」で説明できるのかと考えさせられた。また、どこかで現在の「いじめ」や「同調圧力」の問題にもつながっているように思えたのだ。

 実は、この内容で30分の放送はあまりに短い。ぜひ「NHKスペシャル」などに引き継いでいってもらいたい。そして4月から午後7時半の早い時間帯に動く「クロ現」だが、今回のような重いテーマを深掘りする姿勢は堅持してほしい。

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