團十郎復活! 貫禄のある実盛を披露 歌舞伎全体の新しい勢力図が見えつつある

公開日: 更新日:

 後半は、昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で広く知られるようになった坂東彌十郎が主演。前回主演したのは2017年8月の納涼歌舞伎で、父・坂東好太郎の三十七回忌と兄・坂東吉弥の十三回忌追善だったので、歌舞伎座の通常の公演では初の主役となる。人気が出たら主役にするのだから、松竹も現金なものだ。

 その彌十郎が主演するのは、黙阿弥が明治になってから書いた『人間万事金世中』。強欲な家族の話だが、彌十郎の持ち味なのか、どこか憎めない男になっている。

 錦之助、鴈治郎、扇雀、芝翫、孝太郎ら50代.60代の役者たちが適役で、いいアンサンブルとなった。この世代に集客力のある役者がいれば、全体に充実するのだが、それがいない。勘三郎・三津五郎の不在を改めて感じてしまう。扇雀の子の虎之介はこれまで目立たなかったが、現代風の割り切った娘の役で、印象に残った。

 第三部は松本幸四郎と中村七之助で『十六夜清心』。前半だけなら数年おきに上演されるが、歌舞伎座での通し上演は2002年以来。玉三郎・仁左衛門のコンビで上演されていたので、それが次世代に引き継がれたことになる。この演目だけのポスターも作り、メディアへの露出も多く、最も宣伝に力を入れていたが、客の入りはいちばん悪い。三階は半分も埋まっていなかった。どんでん返しもあって面白い芝居なのだが、正月から「心中の話」など見たくないということだろうか。正月の観客の気分を見誤った、演目の選択ミスだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  3. 3

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  4. 4

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  5. 5

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  1. 6

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  2. 7

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  3. 8

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  4. 9

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  5. 10

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情