柴田理恵さんSPインタビュー「親の介護はひとりで抱え込まないほうがうまくいく」

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「頑張りすぎない」ことが大切

 往復約6時間の遠距離介護をスタートした柴田さんだったが、いまも常に心がけていることがある。それは、「頑張りすぎない」ことだという。

「週に1回は母の様子を見るために必ず富山に帰ろう、ご近所さんの目が気になるからなるべく頻繁に帰らなきゃ、というように、『こうしないといけない』とルール化したり、世間体を気にしたりする必要はないと思います。少なくとも、わたしたち親子の場合は、わたしが無理をして自分の健康を損なったり、仕事に支障をきたしたりしてまで介護することを、母も望んではいません。無理をしすぎて仕事を辞め、収入源も失って親子共倒れになるのは本末転倒です。現役世代なら、離れて暮らす親の様子を毎日見に行くことはできないですから、『元気? 何か困ったことはない?』ってスマホのビデオ通話で顔を合わせる方法でもいいと思うんです」

 親の介護を完璧にこなさなければいけないと気負いすぎるのではなく、時間的にも体力的にも余裕があるときは帰って、親の世話をすればいい。そのくらいゆるい感じのほうが親の介護はうまくいくと柴田さんは言う。

「子どもがひとりで抱え込まないほうが、うまくいくと思うんです。餅は餅屋で、介護の専門家であるケアマネジャーさんやヘルパーさんに任せられるところは任せる。というのも、親って実の子どもに格好悪い姿は見せたくなくて、強がって嘘をつくこともあるんですよね。その一方でケアマネさんには、わがままを言ってみたり。だから、親子だけの対話にしないで、いろんな人を巻き込むことで、その人に見合った最善の介護を行うための発見や気づきも見つかると思うんです。はたから見たら、高齢の母を放ったらかしにしてと、陰口を叩かれているかもしれない。でも、親子で納得して問題がなければ、それは他人がとやかく言うことではないんです(笑)」

 介護を通して、親の老いや衰えを目の当たりにするのは、子どもとしてはショックな出来事でもある。柴田さんは、どのようにその現実を受け止めて、母親との関係を構築しているのだろうか?

「親が弱っていく姿を見るのは嫌じゃないですか。だから、少しでも元気になってほしくて、わたしも介護をはじめたころは、『もうお母さん、しっかりしてよ』って、眉間にしわを寄せて、ついつい声を荒らげてしまうこともありました。でも、そうではなくて、お互いにニコニコし合うことが大事。実の親に面と向かって、『お母さん、育ててくれて、ありがとう。わたしは幸せ者だ』なんて伝えるのは、最初は気恥ずかしいかもしれません。でも、笑顔で感謝の気持ちを伝えること。どんなに年をとっても、親にとって子どもの笑顔はうれしいものなんですよ。母にとって生きる気力になるんだ、元気の源になるんだってことに気がつきました。あとはどんなに高齢であっても、あれもダメ、これもダメって親の自由を奪おうとしないこと。その線引きはとても難しいですが、常に本人の気持ちに寄り添いながら、意思を尊重してあげることも大事だと思いますね」

(取材・文=大崎量平)

柴田理恵(しばた・りえ) 1959年、富山県生まれ。84年に劇団「ワハハ本舗」を旗揚げ。女優として多くの作品に出演するかたわら、バラエティー番組で見せる豪快でチャーミング、かつ優しさあふれる人柄で人気を集める。

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