著者のコラム一覧
ラリー遠田お笑い評論家

1979年、愛知県名古屋市生まれ。東大文学部卒。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。現在は、お笑い評論家として取材、執筆、イベント主催、メディア出演。近著に「松本人志とお笑いとテレビ」(中央公論新社)などがある。

「エバース」は見る者の想像力を刺激する実力派漫才コンビ

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エバース

 いま若手漫才師の中で実力ナンバーワンと評されているのが、佐々木隆史と町田和樹のコンビ・エバースである。2024年に「NHK新人お笑い大賞」、25年に「ABCお笑いグランプリ」を制しており、その実力はすでに折り紙付きだ。

 昨年末の「M-1グランプリ」でも、エバースは順当に決勝へと進出した。優勝候補の筆頭と言われた彼らがファーストラウンドで披露したのは「ドライブデート」のネタ。ドライブデートをするために佐々木が町田に対して「車をやってほしい」と突拍子もない提案をする。町田は戸惑いながらも反論を重ねるが、次第に佐々木のペースに巻き込まれていく。

 町田に車になってほしいというのは、冷静に考えれば実現不可能に決まっているのだが、それを佐々木は感情や勢いではなく、理屈の積み重ねによって押し通そうとする。話の筋道は一貫しており、部分的にはもっともらしいことも言っているため、町田は「おかしい」と思いながらも否定しきれない。常識的な反論を重ねながら、少しずつ佐々木の論理にからめ捕られていく。

 その過程を丁寧に見せることで、町田の立場に感情移入していた観客は、いつの間にか一緒に理屈の迷路に入り込んでしまう。この漫才を見ていると、誰もが車になった町田の姿を頭の中にありありと思い浮かべることになる。見る者の想像力を刺激する上質な漫才だった。

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