著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

AYA SHIMAZU名義で世界デビュー 「歌怪獣」島津亜矢さんを巡る奇跡

公開日: 更新日:

 島津亜矢の歌い手としての凄みを言い表してこれほど的確なものはないだろう。

 紅白を観て年が明けた16年、マキタスポーツさんは自身のラジオ番組で亜矢さんを絶賛、「歌怪獣」と呼ぶ。これが話題となり、やがて本人の耳にも届く。以来「歌怪獣」は公認ニックネームとして定着したという幸せなストーリー。

■「うまい歌手がまた熊本から出てきた」

 熊本の隣県である福岡に住む両親から「うまい歌手がまた熊本から出てきた」とぼくが初めて聞いたのはかなり早い。80年代後半だった。1971年生まれの亜矢さんは15歳の若さでデビューしているから、世に出て数年経ったころか。「また」は、熊本が水前寺清子八代亜紀、石川さゆりといった演歌女性スターを輩出したことを指すのは明らかだ。とはいえ、当時は縁遠く感じていたジャンルの話題としてすぐに消費してしまったぼくが、歌手島津亜矢をつよく意識するのは2010年代まで待たねばならなかった。

 12年4月、NHK-FM『松尾潔のメロウな夜』に、一風変わったリクエストが届く。R&B、ソウルに特化したこの番組にいつも通好みの曲をリクエストしてくる常連リスナーからのメッセージには、シンプルに「島津亜矢があの名曲を!」とあった。ぼくは大ヒット映画『ボディガード』に主演したホイットニー・ヒューストンが歌った主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を、亜矢さんが10年にカバーしていた事実を初めて知る。なぜ12年になってリクエストされたかといえば、同年2月にホイットニーが悲惨な最期を遂げたから。いつだってラジオDJを支えるのは、時機の読みに長けたリスナーの存在なのである。オンエアがきっかけでぼくは亜矢さんのコンサートに招かれ、そこから付き合いがはじまった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋