著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK朝ドラ「おむすび」橋本環奈はギャルで「納得と共感」を得られるか

公開日: 更新日:

 新たな連続テレビ小説「おむすび」(NHK)がスタートした。舞台は2004年の福岡県糸島郡。主人公は高校1年の米田結(橋本環奈)だ。両親と祖父母との5人暮らし。姉の歩(仲里依紗)が東京にいるらしい。

 第1週で分かったのは、このドラマが「食」「ギャル」「災害」という3つのテーマを含んでいることだ。結の家は農家で、食べることも大好き。「おいしいもん食べたら悲しいこと、ちょっとは忘れられるけん」などと言わせて、食に関わる将来を暗示させている。

 また、結は1995年の阪神・淡路大震災の被災者でもある。神戸に住んでいたが、震災を機に父親の故郷である糸島に移り住んだ。災害に遭遇した人たちの当時と現在、さらに「これから」も描こうとしているとみた。

 さて、問題は「ギャル」である。ギャル文化の全盛期は90年代後半だ。ドラマの背景である2000年代半ばにもギャルはいたものの、往時の勢いはない。特に地方では微妙な存在と化していた。

 そのギャルを、物語の中で何らかの価値観の「象徴」にしたいようだが、やや強引な印象は否めない。「食」や「災害」といったテーマとは異なり、ギャルに理屈抜きの拒否反応を示す視聴者は少なくないからだ。石破首相の所信表明演説ではないが、ギャルで見る側の「納得と共感」を得られるのか。逆に制作陣の腕の見せどころかもしれない。

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