著者のコラム一覧
森雅史サッカージャーナリスト

佐賀県出身。久留米大付設高から上智大。サッカーダイジェスト編集部を皮切りに多くのサッカー雑誌の編集に携わり、2009年の独立後も国内外精力的に取材を続けている。「Football ZONE」「サッカー批評web」などに寄稿。FM佐賀で「木原慶吾と森雅史のフットボールニュース」。「J論プレミアム」「みんなのごはん」を連載中。「日本蹴球合同会社」代表。著者写真は本人提供。

(2)「最年長のラモスさんに『日本代表を辞めてほしい』。捨て身の賭けに出た」

公開日: 更新日:

柱谷哲二(元日本代表/61歳)

 1980年代の日本リーグ時代から「闘将」として日本サッカーを牽引してきた。90年代になってJリーグ創設、W杯最終予選での奮闘などでサッカーの楽しさ、過酷さ、素晴らしさを世に知らしめ、そして現役引退後は高校、大学、JFL、J3、J2、J1とすべてのカテゴリーの指導現場に立ちながら、日本サッカーの変遷をつぶさに見てきた男が「日本代表とは?」「北中米W杯に挑んだ森保監督とは?」「日本サッカーの未来とは?」を全3回にわたって存分に語り尽くした。(全3回の第2回)

  ◇  ◇  ◇

 かつての自分を振り返ってみれば、およそキャプテンという器ではなかったと思います。

 サッカーを始めて中学、高校と常にその役割を担ってきましたが、中身は完全なる自己中心主義でした。

 チームが勝っても、自分が点を取らなければ気分を害していました。

 サッカーとは「自分が目立つための舞台」であり、「チームをまとめる」といった発想は、正直に言うと微塵もありませんでした。

 そんな男が、日本代表の主将という重責を担うことになりました。

 1992年3月に日本代表の指揮官に就任したハンス・オフト監督から部屋に呼ばれ、主将に指名されて部屋を退出した瞬間でした。「これはまずいな……」と冷や汗が流れたことをハッキリと覚えています。

 当時の代表には、ラモス瑠偉さん(69歳=東京V、岐阜、ビーチサッカー日本代表監督を歴任)やカズ(三浦知良、59歳=サントス、東京V、ジェノア、京都、神戸、シドニーFC、横浜FC、JFLの鈴鹿などでプレー。現在はJ3福島所属。元日本代表FW。元フットサル日本代表)といった強烈な個性を持つスター選手が揃っていました。 読売クラブ(現・東京ヴェルディ)の黄金期を築いた彼ら、日産自動車所属のスター選手たちをどう束ねたらいいのか?

 1992年に日産から読売に移籍し、日本代表を構成する中核チームに人脈があった私が、最初に着手したのはチーム内に漂う「目に見えない壁」を取り払うことでした。

 当時の代表には、まだ昭和特有の厳格な上下関係が残り、所属クラブごとの派閥も存在していました。

 ピッチ上で最高のパフォーマンスを発揮するためには、キャリアや年齢に関係なく、全員がフラットな関係性を持ち、自由に意見を戦わせる集団でなければなりません。 相手がスター選手だからといって沈黙するのではなく、後輩からも「自分はこうしたい」という意思が自然と湧き出てくるような風通しの良い組織作りを目指しました。

 オフト監督は「食事の時間」を極めて重視する指揮官でした。全員が揃って「いただきます」をしてから食事を摂り、最後の一人が食べ終えるまで席を立つことは許されません。

 当初、選手たちは無意識のうちに仲の良い者同士が円卓を囲んでいました。これではグループが固定化されてしまいます。 私は、井原正巳(58歳=柏、福岡で監督を歴任。元日本代表DF)、ゴン(中山雅史、58歳=元J沼津監督。元日本代表FW)、福田正博(59歳=J浦和で1995年に得点王。解説者)、森保一といった気心の知れた仲間に働きかけ、彼ら四人が別々のテーブルに座るように仕向けました。

 半強制的に座る位置をバラバラにし、組み合わせをシャッフルすることで淀んでいた空気を攪拌しようと試みました。

 JFA(日本サッカー協会)に掛け合い、遠征先のホテルの宿泊フロアにリラックスルームを設置してもらったことも私なりの工夫でした。

 選手は放っておくと自室にこもりがちになります。それを防ぐために広い部屋をマッサージルームとし、そこに夜食のサンドイッチ、フルーツ、飲み物を用意してリラックスルームとしました。 マッサージの順番を待つ間、練習後のわずかな時間に三々五々みんなが集まり、自然と会話が始まってリラックスできる場所を作ったのです。

 すぐにみんなが他愛もない話をしたり、チーム戦術の議論を交わすようになりました。こうしたことの積み重ねが、少しずつ「戦う集団」に必要不可欠な「絆」をより強固にしたと感じています。

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