直木賞受賞小説の新作歌舞伎「木挽町のあだ討ち」の見どころは?

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 夜の部・最初は片岡仁左衛門と松本幸四郎が日替わりでつとめる『彦山権現誓助剱』。仁左衛門の日に見たが、不条理劇のような設定なのに、オーソドックスな歌舞伎として見せてくれる。芸の力だ。

 夜の部で見応えがあるのは尾上右近の『春興鏡獅子』。9代目團十郎が作り6代目菊五郎に伝授した、成田屋・音羽屋双方にとって重要な家の芸を、菊五郎のひ孫にあたる右近が演じている。長い舞踊劇だが、右近はマラソンではなく、短距離走を重ねるように全力疾走。瞬間ごとに躍動感に満ちている。坂東亀三郎と尾上眞秀の胡蝶の精は、少年らしいキビキビした動きが、蝶々のヒラヒラとした軽やかさを感じさせる。まるで、このまま飛んでいけるのではないかと思えるほどだ。

 最後が新作で、尾上松緑による講談の歌舞伎化シリーズ3作目『無筆の出世』。とにかく、物語がつまらない。さらに講談師・神田松鯉が、「恩を仇で返すのはよくあるが、仇を恩で返すのは珍しく、立派である」と念を押すので、道徳の授業を受けているような気分になった。 

(中川右介/作家)

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