「時代と寝た男」加納典明(21)「ムツさんは自分を楽しみ、能力を試し、やり切った。そしてあの著作群は…」
小説、ノンフィクションの両ジャンルで活躍する作家・増田俊也氏による新連載がスタートしました。各界レジェンドの一代記をディープなロングインタビューによって届ける口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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増田「今になって考えるとニューヨークへ行くか行かないかは人生の大きな分岐点だったと」
加納「そう。ニューヨークの芸術狂乱のあの時期に、あそこに住み続けたらどうなってただろうと。向こうの芸術家たちに『加納、おまえ絶対ニューヨーク合うから来いよ』って何人にも言われた。だから俺も、いいな、こっちで俺の写真力っていうか、俺の能力、試してみたいと思った。でも、以前言ったように、東京帰ってきて『FUCK』で人気が出ちゃって仕事が殺到してニッチもサッチもいかなくなった」
増田「僕も本当に人生はあみだくじみたいだなって思いますね。あっちの道を選んだらどうだったろうという無限の選択」
加納「まったくね。だからこそ面白いんだろうけどね」