「時代と寝た男」加納典明(21)「ムツさんは自分を楽しみ、能力を試し、やり切った。そしてあの著作群は…」
増田「畑さんが2023年に亡くなったときはやっぱりショックを受けましたか」
加納「いや、彼は自分を楽しんだ人だから。大いに自分のその能力を試した。そしてやりきった。それがこう、文化的に、科学的にどこまで意味あるかとか、そういうつまんない次元のことじゃなくてさ、1人の人間の生きざまとしては十分だったと俺は思うんだ」
増田「亡くなった時は特に悲しいっていうよりも」
加納「そうそう。誰でも寿命があるから。俺だってもちろん、そのうちやってくる。だから畑さんが亡くなったことは残念だけど、やることやりきって亡くなったんだという思いはあるね」
増田「表現者としてあのようにありたいと」
加納「そうだね。彼の書いたものは、いわゆる純文学ではない。エンタメでもない。随筆が中心です。その読者っていうのは哲学者とか文化人ではなくて、多くの人にわかりやすく書いてある。彼自身はものすごく頭が切れて複雑な人物なんだけど、それを誰にでもわかるように噛み砕いて書いている。明快に事実を展開して中学生ぐらいなら十分わかるように書いた」