「時代と寝た男」加納典明(21)「ムツさんは自分を楽しみ、能力を試し、やり切った。そしてあの著作群は…」
①「畑文学」のすごさとは…
増田「彼はほんとうは純文学をやりたかったけども、東大の大学院生時代に挫折しています*」
※ムツゴロウと純文学:畑正憲は東京大学時代はもともと純文学を志して習作を繰り返していた。しかしある日、某誌に掲載されていた東大の現役学生の短編小説を読み、あまりのレベルの高さに「俺にはこんなものは生涯かけても書けない」と衝撃を受けてエッセイスト志望に転じた。その東大の学生とは後にノーベル文学賞を受賞する大江健三郎であった。
加納「でも、彼が残した著作物はそれを大きく超える成果を出していると思う。彼の自然体だったと思うな、俺は。生きた証しとしてあれほど素晴らしい著作群はないと思う」
増田「加納さんが王国で暮らしている4年間は、石川次郎さんとかが『そこの生活を書けよ』みたいなことは言ってこなかったですか」
加納「うん。あんまりそういうのなかったね」
増田「じゃあ石川さんだけじゃなくて、いろんな人が自由にさせてくれた時期なんですね」