俳優・小説家の中江有里さんは大の阪神ファン「一度でいいからタイガースの試合で始球式を」
中江有里さん(俳優・小説家/51歳)
今秋、26年ぶりの主演映画が公開になる中江有里さん。死ぬまでにやりたいことは、どちらも大好きな本と阪神タイガースを応援することだという。
◇ ◇ ◇
死ぬまでにやりたいことは仕事とプライベートで1つずつあります。仕事は読書に関したことで、出版界を盛り上げていきたいんです。
私は子どもの頃から本が好きで、「週刊ブックレビュー」(NHK)でMCをやらせていただき、書評のお仕事や自分でも小説を書いてきました。私自身、本に救われてきたので、「読書のよさ」を伝えていく活動は死ぬまで続けていきたいと考えています。
今回の芥川賞、直木賞が27年ぶりに受賞者が出なかったことがニュースになりましたが、文学に関することがニュースになるなんて、今はほとんどないですよね。それに「本は部屋にたまって困る」と言う方もいます。私も本棚に本が増えて管理は大変なんです(笑)。
例えばマンガは電子書籍が多く読まれていますし、電子で本が売れることはいいと思うんです。でも、私はやっぱり紙の本が好きですね。日本は本の個性といいますか、装丁を含めて造本にこだわりの強い本が多いと思うんです。書かれている中身の価値だけではなくて、外見も含めて価値のあるものが本ですし、そこに引かれる読者も多い。だから、外見も含めた価値を高める努力をしなければと感じています。
「この本いいよ」と人に言われても読んでみないとわからない。でも、装丁や造本は見て、手に取れば伝わるものがある。中身とリンクしていますから。それと、今は本以外に娯楽や趣味がメチャクチャ多い。ある意味、時間の奪い合いになっています。その中で、本はアナログなところがいいんです。ゲーム機も充電の必要もなく、明かりさえあれば楽しめる。
「タイパやコスパと言われる時代で、なぜ読書を娯楽に選ぶのか」と聞かれそうですが、私からすれば読書ほどコスパが素晴らしいものはないんです。「映画なら2時間で終わってしまうけど、本なら1週間楽しめますよ」と言いたいです。ひとつの作品で長く楽しめる。だからタイパもコスパもいいという考え方なんです。私が読書を勧める理由のひとつに、自分のペースを守れることがあります。私は子どもの頃から内向的でしたが、ひとりで過ごすのが苦ではなかった。それは読書が好きだったから。デビュー後も控室でいろんな俳優さんとご一緒する機会がありましたが、自分の居場所がない時はひとりで本を読んでいました。本を読むことに支えられてきましたから。これからもそんな読書の大切さを伝えていきたいと思います。