濱口竜介監督の仕事哲学「判断基準は“嫌”かどうか」/カンヌ受賞 映画『急に具合が悪くなる』
本当に「変えたい」なら10年はかかる
──商業映画デビュー作となった『寝ても覚めても』(2018)以前から多くの作品を手掛けられており、海外でも評価を得ていました。とはいえ、商業映画デビューに至るまでの期間、焦りはありましたか。
「全くなかったわけではきっとないのですが、ある程度は楽観的でした。他者からはくすぶっているように映る期間だとしても、自分にできうる限りの努力はしているという自負はあったので、これでダメならダメだろうと」
──なるほど。
「何の問題も感じずヘラヘラ過ごしていたわけではなくて、その時々の問題を、本当に少しずつ解決してきた。必要なのは毎日の着実な変化です。今、自分が受けているような評価だけを見て『どうすれば映画祭に選ばれるんですか?』と聞かれることがありますが、何事も一朝一夕ではどうにもならない、ということは言えます。
十数年にわたって映画を撮り続けた期間が必要だったとは思います。その質問に答えるなら、本当に変えたいのなら、最低10年はかかるということを受け入れるかどうかではないか、と思います」
──カンヌ、ヴェネチア、ベルリン、そして米アカデミー賞®と、国際的な評価を重ねてきました。ご自身の中で変わったこと、変わらないことはありますか。
「変わったのは、自分は知らないのに自分のことを知っている人が増えたとか。そんな時に、どう振る舞っていいかわからないというのはありますね(笑)。ありがたいなと感じるのは、ある種のワガママみたいなものが通じるようになったことです。結局できあがるまでは自分の感性を信じてもらうしかない局面もあるので」
──評価、実績があると、大きな挑戦もしやすくなる。
「そうだと思います。今回も3時間16分の映画が許されたのは、今までの実績が加味されたのであろうと」


















