濱口竜介監督の仕事哲学「判断基準は“嫌”かどうか」/カンヌ受賞 映画『急に具合が悪くなる』
着想から約5年。監督を突き動かしたもの
──変わらないことは。
「家が狭いとか(笑)。まあ、それはそれとして。あまりに大きなものに巻き込まれてしまうと、自分の直感を通すということが難しくなります。先ほども少し話しましたが、自分の中での“これは違うな”という違和感は大切です。
挑戦も必要だとは思いますが、そうした違和感をキャッチするためにも、自分の能力の限界を見極めて、明らかに限界を超えているようなものについては距離を置くようにしています」
──そんな監督が取り組んだ新作『急に具合が悪くなる』が公開になりました。がんを患った哲学者・宮野真生子と文化人類学者・磯野真穂の往復書簡集を原作に、介護施設ディレクターのフランス人女性と、日本人の舞台演出家の魂の邂逅を描いた作品です。着想から5年の月日をかけ、監督にとって初の海外ロケ作品になりました。改めて、監督を突き動かしたものとは。
「原作の中で磨き抜かれた言葉のやりとりがあり、まずは単純に感動したわけです。その感動自体が大きな原動力になりました。そこから、松田(広子)プロデューサーに『濱口さんにしかできません』と言われ、『じゃあやってみようか』みたいな気持ちに(笑)」
──そこも「嫌じゃない」という直感、ひいては自分自身を信じたということですか?
「自分というか、あらゆる人の直感を信じています。基本的には考えるより正しいものだと。どちらかというと、計画を維持するために直感を歪めてしまうことが問題です。誰かが違和感を持っているのに、それを無視してプロジェクトが進行してしまうと、その違和感はどこかで花開いてしまう。
特に映画は集団芸術ですから、スタッフ、キャスト、みんなが違和感なく、直感的に動けるような状況をどう作っていくかということが大事だと思っています」
▽映画『急に具合が悪くなる』は6月19日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開。
(聞き手=望月ふみ)
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