西牟田靖
著者のコラム一覧
西牟田靖ジャーナリスト、ノンフィクション作家

1970年、大阪府生まれ。国境や家族などをテーマに執筆。著書に『ニッポンの国境』『本で床は抜けるのか』『わが子に会えない』など。

阪神・淡路大震災 帝産観光バスの安井義政さん[前編]「道路がスッと消えてなくなったんです」

公開日: 更新日:

 1995(平成7)年1月17日の午前5時46分──。神戸市を中心に阪神間の都市部が壊滅的な被害を受け、6434人もの人命が失われたが、九死に一生を得た人もいた。帝産観光バス(本社・東京)京都支店の運転士、安井義政さん(60)も、そのひとりだ。

 80年代後半、日本列島はバブル景気に沸いた。空前のスキーブームが列島を席巻、関東や関西の大都市からはゲレンデへのツアーバスが多数運行された。

 安井さんは震災当時、長野県北部にある野沢温泉スキー場から京阪神への帰途だった。

「大津、京都、大阪でお客さんを降ろし、神戸へ向かっているところ、地震が発生したんです。当時はスキーブームだったので、12月半ばから3月初めまでの時期は、スキー場と京阪神の往復がもっぱらの仕事でした」

 震災前、1月14日の午後8時に大阪新阪急ホテル、京都駅、大津でお客さんを乗せ、名神高速を走った。大阪から野沢温泉スキー場までは約500キロ。客席はほぼ満員の43人(定員47人)だった。

 野沢温泉スキー場に着いたのは15日の昼前。帰りは16日で、野沢温泉を出発したのは午後6時。乗客は行きと同じ43人で先輩運転士と2時間交代で運転して関西へ。そして震災当日を迎えた。

「阪急の梅田駅前にある大阪新阪急ホテルに着いたのは17日の午前5時すぎ。通常は大阪止まりなんですが、その時は神戸の三宮駅へ向かうお客さんがいたので、さらに先へと進むことになりました」

 バスには10人乗っていた。

「『お急ぎの方は電車をどうぞ』というアナウンスをしたところ、『電車で帰るわ』と言って大阪で下車されたお客さんが7人おられて、残りの3人とともに神戸を目指しました。午前5時半かな、梅田を出発して阪神高速神戸線に入りました。私はガイド席に座り、運転は先輩の運転士。乗っていた3人は20代半ばの女性で友人同士、前から4列目に並んで座っていました。神戸から加古川(明石と姫路の間の駅)までの電車賃しか持っていないので、バスで神戸へ行くという話でした」

2トントラックは落下して炎上

 震災に遭ったのは、3人を神戸まで送る途中のことだった。

「西宮を越したところで、突然、空がピカッとフラッシュをたいたように光って、ドンと強烈な縦揺れがありました。その後、激しい横揺れ。『なんやこれ!』『地震ちゃうの!』って。路面が波打って、目の前に空と路面が交互に見え、お尻が浮きました。運転していた先輩運転士が『ブレーキが利かへんわ』と叫んだのを覚えています。随分長く感じていたんですけど、揺れていたのは数秒に過ぎなかったようですね。つんのめるようにして何とか停車。先輩運転士がサイドブレーキをかけた途端、前方の道路がスッと消えてなくなった(崩落した)んです」

 その時、同じ進行方向を走っていた乗用車が上下ひっくり返ったまま落下していくのを目の当たりにした。「吸い込まれるみたいだった」と振り返る。

「えー! って思いました。その後、対向車線を走っていた灯油を積んだ2トントラックが落下して炎上したんです。『いやっ、何これ! わー』って思わず叫んでしまいました」

 前輪が宙に浮いた状態で踏みとどまったのは偶然が重なったからだ。

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