「どんな親なの?と笑われる」キラキラもシワシワも…名前が“生きづらさ”を生む現代。親からの愛にラベルを貼るな

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コクハク

 キラキラネーム、シワシワネームなど年代によって“名前”の傾向が異なります。名前が“社会的ラベル”になる現代では、名前を見ただけで性格や親のタイプを勝手に判断されることも…。

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名前は生まれた瞬間から背負わされる“個性”

就職の面接で、まず名前を三回聞き返されるんです」

 そう話すのは、25歳の男性・陽翔さん。名前だけ見ればごくありふれているようだが、実際の漢字は「陽翔」と書いて「ひなた」と読む。読み方が珍しく、たびたび「はると」や「ようしょう」と間違えられるという。

「一度覚えてもらえればいいんですけど、初対面では必ず“どんな親なんだろうね”って顔をされるんですよね」

 いわゆる“キラキラネーム世代”の彼らにとって、名前は生まれた瞬間から背負わされる“個性”だった。だがそれは、同時に社会の“名前フィルター”を通すときのハンデにもなる。

 履歴書に書かれた瞬間に「読めない」「親が変わってそう」「チャラそう」と、本人とは関係のない印象が付いてしまう。

 一方で、逆の悩みを抱えるのが「シワシワネーム」世代だ。

 33歳の女性・とめ子さん(仮名)は、祖母と同じ名前をもらったという。

子どもの頃から“おばあちゃんみたいな名前”ってからかわれてきました。でも社会人になったら、“落ち着いた印象があるね”って言われるようになって。結局、評価は時代次第なんですよね」

“キラキラ”でも“シワシワ”でもない、ちょうど中間の「普通の名前」の人だけが、波風立たずに生きているのかもしれない。

 だが「普通であること」が最も得だというのは、なんとも皮肉な話だ。

SNSにはびこる“名前いじり”

 SNSでは、たびたび“名前いじり”が話題になる。

 珍しい読み方や当て字の人が投稿すると、コメント欄には「DQNネーム」「読めねえ」「親のセンスが…」といった無責任な言葉が並ぶ。本人ではなく、名付けた親への批判として書かれているように見えて、実際に傷つくのはその子ども自身だ。

 一方で、“古すぎる名前”の人たちも笑いのネタにされやすい。

 SNSで「シワシワネーム」として取り上げられた投稿では、「まさ」「たけし」「きよし」といった昭和テイストの名前に対して「年齢詐称かと思った」「渋すぎて逆にカッコいい」といったコメントが飛び交う。

 笑いながらも、そこにはやはり“名前=キャラクター”として扱う無意識の偏見が潜んでいる。

社会が勝手に“ラベル”を貼ってくる

 心理学的にも、“名前印象”は採用や恋愛などの場面で影響を与えることがわかっている。

 人は名前を通して、その人の性格・家庭環境・社会的階層まで想像してしまう。

 たとえば、「大翔(ひろと)」や「莉子(りこ)」という名前からは“今どきで活発そう”という印象を受けるが、「たけし」や「のぶこ」からは“真面目で保守的”というイメージを抱きやすい。

 もちろん本人は何も悪くないのに、社会は勝手に“ラベル”を貼ってくるのだ。

 名前は、親の愛情や時代背景が詰まった“記号”のはずだった。

 それを笑いものにしたり、印象操作の材料にしてしまうのは、あまりに短絡的だ。

名前の価値は時代の風向きで変わる

 陽翔さんは言う。

「子どもの頃は嫌でしたけど、今はもう、名前を訂正するのも慣れました。逆に“珍しいね”って言われたら、“覚えてもらえてラッキー”って思うようにしています」

 一方のとめ子さんは、笑ってこう話した。

「今は“とめちゃん”って呼ばれるのがけっこう気に入ってます。時代が一周して、“レトロかわいい”って言われるようになったので」

 結局、名前の価値なんて時代の風向きひとつで変わる。

 10年前に笑われた“光翔(ぴかる)”が、20年後には“個性的で素敵”と褒められるかもしれない。

“たけし”が時代遅れと言われても、本人が堂々と生きていれば、むしろそれがブランドになる。

 生きづらいのは“読めない名前”でも“古すぎる名前”でもない。“名前で人を判断する社会”のほうだ。

 誰もが名前に込められた思いを背負って生きている。

 それを笑うより、まずは一度、「あなたの名前、素敵ですね」と言える人間でありたい。

(おがわん/ライター)

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