「世界認識の再構築」寺島実郎著/岩波書店(選者:佐高信)

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「全体知」から読み取る統一教会イデオロギーへの警鐘

「世界認識の再構築」寺島実郎著

 表題の本ではないが、寺島の「21世紀未来圏 日本再生の構想」(岩波書店)に「一九八七年には東芝機械事件が起こった。文鮮明が創刊(一九八二年)したワシントン・タイムズ紙が火をつけ、ワシントンの右派ロビイストが呼応した典型的なジャパン・バッシングの出来事であった」とある。東芝の子会社である東芝機械がソ連(現ロシア)向けに輸出した工作機械とNC装置がソ連の潜水艦のスクリュー音の静粛性向上に寄与したとして対共産圏輸出統制委員会(ココム)違反とされた事件だったが、反日デモまで組織されたこの動きの背後に統一教会がいると当時も指摘されていた。

 石破茂から高市早苗に首相が代わってしまったこの時にぜひ、「全体知」を説く寺島の本を熟読して、冷静な「世界認識」を獲得してほしい。 自民党ヤクザと半グレ維新が野合した高市政権は端的に言って“統一教会政権”である。生みの親の麻生太郎や萩生田光一、そして木原稔ら統一教会と深い関係の面々によって支えられ、高市自身も傘下の「Viewpoint」の対談に出ている。

 日本という国家を大事にするというなら、反日で反共のこの統一教会とキッパリ手を切らなければならないと思うが、そんな気配はまったく見られない。それどころか、麻生や萩生田が中心になれば統一教会は大復活することになるだろう。

 この欄で要約することは難しい寺島の大著を私なりに強引に解釈して、「高市統一教会政権」への警鐘を鳴らしてみたい。

 アメリカべったりの小泉(純一郎)政権が誕生した時、日本は対米と対中国の2次方程式を解かなければならないのに、小泉はそれを解こうとしていない、と私は批判した。2次方程式を解けないと断罪したのである。

 次の安倍晋三は1次方程式も解けなくて、麻生太郎に至っては方程式の意味がわからなかったと講演などで話して笑いをとったのだが、1次方程式も解けなかった安倍を高市は尊敬し、方程式の意味がわからない麻生を応援団長としている。戦慄すべき事態だろう。

 寺島の「全体知」は、経済をイデオロギーで支配してはならないと教えている。しかし、石破を引きずり降ろした高市自民党と利権に染まった維新は、反共という統一教会イデオロギーに塗りこめられている。それほど異常なのだということを高市に拍手を送る人たちはまったく考えていないのだろう。 ★★★

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