「広告の昭和」竹内幸絵著

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「広告の昭和」竹内幸絵著

 1967年、日本の白黒テレビの普及率は83%を超え、テレビ広告費も1500億円超と新聞広告費の1600億円に迫る勢いだった。カラーテレビが広く普及するのはもう少し先だが、この年、来たるべきカラー時代の幕開けを告げるテレビCMが登場した。レナウンの「イエイエ」だ。斬新な色使いとポップアートのセンスと技法を取り入れた、「イエイエ以前、イエイエ以後」という言葉があるほどCM史上画期をなすものだ。そこには前衛映画やグラフィックデザインの手法を駆使した戦後の新しいCMの流れが受け継がれ、「芸術とメディアの結節点」としてのテレビCMという位置づけを示すものでもあった。

 本書は戦前の「動画」=「動く広告」を新しいジャンルの起点として、「動画」を巡って絵画、グラフィックデザイン、写真、映画、アニメなどの諸ジャンルがせめぎ合う中で、昭和のテレビ広告がどのような軌跡をたどってきたのかを描いたもの。

 戦前の国策的な「広告映画」から始まり、日本独自の人形アニメ(ミツワ石鹸ほか)や、ディズニーの「リアル」という呪縛から脱却してアニメ表現の突破口を開いた柳原良平の「アンクルトリス」(サントリー)をはじめとする新アニメの動向がやがて「イエイエ」につながっていくことを詳細に跡づけていく。

 テレビCM史上に名を残すキーパーソンにも新たな照明を当てる。生涯に500を超えるテレビCMを送り出し国内外の賞を片っ端から受賞した伝説のCMディレクター・杉山登志。演出したCM総数が3000本以上ともいわれる映画監督・大林宣彦。テレビCM全盛の時期に紙媒体、ポスターの復権を果たし、マスではなく密度の濃いコアな層に向けた広告を打ち出したアートディレクター・石岡瑛子。それぞれの果たした役割を的確に押さえている。豊富な図版と詳細な注で埋められ、読み応えたっぷり。 〈狸〉

(青土社 4950円)

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