オダギリジョー「納得した仕事しか受けない」というこだわり。芸術家から犬の役まで!? “個性爆発”する作品5選
                         2021年にNHKで放送が始まったテレビドラマ『オリバーな犬、(GOSH!!)このヤロウ』が、現在、映画版となって絶賛公開中。
 芸能界の異端児とでも言うべき、歯に衣着せぬ発言、奇抜なファッションセンス、そして芸術家気質な独特な感性。そのすべてがオダギリジョーをオダギリジョーたらしめているわけですが、それは彼の出演作にもまた大いに現れているのです。
 デビュー当時から、自分が納得した仕事しか受けないという芯の通ったキャリアを積んできたオダギリさんの独特な個性が爆発している出演作5作品を紹介します。
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その後のキャリアを予感『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)
                         リアルな芝居がやりたくて俳優を志すようになったというオダギリさんは、出世作『仮面ライダークウガ』においても様々な伝説を残し、俳優デビューした当初から他の若手俳優とは異なるオーラを身に纏っていました。
 そんなオダギリさんは、2005年に『メゾン・ド・ヒミコ』でゲイの青年役に挑戦しました。ゲイの父親を持つ沙織(柴咲コウ)が、ある時、父親の恋人だと名乗る青年・春彦(オダギリジョー)と出会うことから幕を開ける本作。沙織は春彦との交流を通して、父親の本当の姿を知っていくことになります。
オダギリさん演じる春彦はゲイのための老人ホームの館長を務めており、沙織の父親を心から愛しているキャラクターです。今ほどLGBTQへの理解が深くなかった当時、同性愛をテーマにした作品へ出演することに躊躇する若手俳優は実際多かったと思います。
しかしながら、まだまだ一端の若手俳優という認知だった当時のオダギリさんは、見事な役作りで春彦役を体現。同性愛者をバカにする中学生に対して放つセリフからはものすごい熱量を感じさせるのです。
この頃からすでに作品を選ぶ審美眼が抜群に優れており、オダギリさんのその後のキャリアを予感させる感性が発揮されていると言えるでしょう。
カメオ出演でも強烈『ミスターGO!』(2013)
                         オダギリさんと言えば、日本だけにとどまらず海外の映画へも積極的に出演し、名だたる名匠たちをその演技の虜にしてきたことでも有名です。ともあれ、海外の前衛的な才能とぶつかり合った時のオダギリさんは、より一層の個性を発揮することになります。
 2013年公開の韓国映画『ミスターGO!』の主人公は、なんと!ゴリラのプロ野球選手。弱小プロ野球チームに助っ人として加入したゴリラのミスターGOが一世を風靡していく様を描き出しています。
本作でオダギリさんは、中日ドラゴンズの球団オーナーであるイトウ役に扮しています。おかっぱに黒縁メガネという何とも異質なフォルムで現れ、コミカルな演技を披露してくれるのです。
カメオ出演というクレジットのため、決して出番は多くありませんが、その強烈な佇まいは大きな印象を残し、主人公のゴリラよりも脳裏に焼き付いてしまうこと請け合いです。
自然体から“魅せる”演技へ『FOUJITA』(2015)
                         第一次世界大戦より以前、フランスのパリで活動した画家・藤田嗣治の半生を描き出した映画『FOUJITA』。この作品でオダギリさんは、ほとんどのセリフをフランス語で話す圧巻の演技を魅せ、役柄になり切って見せました。
 独特な個性を携えたオダギリさんだからこそ、当時としても個性の強かった芸術家になりきることが出来たのではないかと思わせるほどのハマり役。
オダギリさんと言えば、リアルな演技を追求し、自然体な姿でスクリーンの中に現れることが多いのですが、本作ではどちらかというと‘‘魅せる演技''に舵を取っている印象を受け、それまでの別作品とは異なるアプローチで役作りをしている印象を受けます。
それも外国語での演技が大半を占めるからこその役作りだったことが伺えるのと同時に、芸術家らしい自信の表れや余裕を存分に表現したかったからなのかもしれません。
ぶっとんだ役に驚愕!『オリバーな犬、(GOSH!!)このヤロウ』
                         オダギリさんと言えば、監督や脚本家としての才能もピカイチなことで知られています。その魅力が大爆発している作品は、やはり『オリバーな犬、(GOSH!!)このヤロウ』でしょう。本作は、オダギリさんが監督・脚本・演出・編集・出演の一人5役を務める、まさに‘‘オダギリジョー劇場''。
 鑑識課警察犬係に所属する青葉一平(池松壮亮)とその相棒・オリバー(オダギリジョー)の姿をコミカルに描いた脱力系警察ドラマです。正直、ここまでぶっ飛んだ作品をNHKは放送してくれるのかと驚いたことを憶えています。
それが2022年にはシーズン2が放送され、さらに2025年には映画版となって劇場公開されるという大ヒットを記録。オダギリさんは、ハンドラーにだけおっさんに見える警察犬のオリバー役として、水を得た魚のようなコメディ演技を披露。
やる気を感じさせない絶妙なセリフ回しだけでなく、着ぐるみを着て軽快に動き回る姿や警察犬の感情を体現した表情も大きな見どころとなっており、これこそまさにオダギリさんが俳優としてやりたかった境地なのだろうなと思わされる次第。
『時効警察』時代に培ったであろう、面白いものを面白く見せようとする演出も冴えており、オダギリさんのキャリア史上もっとも個性が爆発した作品になっています。
長編映画監督デビュー作『ある船頭の話』(2019)
                         オダギリジョー監督作品の中には、オダギリさん自身が俳優として出演していない作品も存在します。とりわけ特筆すべきは、やはり2019年の『ある船頭の話』でしょう。
 本作は、渡し船の船頭であるトイチ(柄本明)と少女の交流をメインに映し出しており、『オリバーな犬』とは正反対の人間ドラマなのです。
とある山間の村に流れる川の景色を切り取り、そこで繰り広げられる人間ドラマを静かに描き切る。日本映画というよりもヨーロッパのミニシアター系の映画を彷彿させる雰囲気を醸し出します。
語り部となる年老いた船頭の行動を通して、観客に「人間とは何か?」と問いかけてくる様には、オダギリさんが敬愛するアメリカの映画監督ジム・ジャームッシュからの影響が強いように感じます。
名優・柄本明の哀愁漂う名演を引き出したオダギリさんの演出力も光り、もはや本作が監督デビュー作であるということを忘れてしまうほど。
もともと映画監督を夢見て、アメリカへと渡り、願書の記載ミスからいつしか俳優を志すようになったオダギリさん。幼き日から憧れ続けてきた映画監督としての感性にも素晴らしいものがありますね。
独特な存在感を放ち続ける
                         俳優としても、監督としても独特な存在感を放ち続ける、オダギリジョーさん。約25年前のデビューから一貫して独自のルートを歩み続けている印象があり、このまま歩み続けたら、一体どんな場所に行きつくのか楽しみは尽きません。
 俳優と監督の二刀流で、これからもその才能を爆発させてほしいものです。
(zash)                    

                                        
                                        
















