「南海王国記」飯嶋和一著
「南海王国記」飯嶋和一著
明王朝が倒れ、満州人が国号を清として漢土を次々と席巻していった時代に、台湾を中心とした南海王国が出現した。建国したのは、海賊で明の福州都督の鄭芝龍と日本人の田川マツの間に生まれた男。彼は日本名を「福松」といい、「鄭森」と名乗った後に、福州の皇帝・唐王隆武帝により「成功」の名を授けられ、「鄭成功」または皇帝の姓を持った殿様として「国姓爺」とも呼ばれるようになった。
本書は、鄭成功の台湾設立を主軸に、明王朝滅亡の契機となった宦官の策略による名将・袁崇煥の処刑から、オランダから覇権を奪って立国された南海王国がわずか22年で再び清に下るまでを描いた壮大な歴史絵巻。中国、台湾のみならず、日本なども含め描かれる地域もアジア広域に及ぶ超大作だ。
我欲に走る高官によって人間同士の信頼が失われたことで明王朝が滅亡したと考えた鄭成功が、「信」を掲げて南海王国を打ち立てた志の熱さが印象的。主要人物だけでも70人を超え、500ページ以上というボリュームで読み応えも重量級だ。 (小学館 2530円)



















