「南海王国記」飯嶋和一著

公開日: 更新日:

「南海王国記」飯嶋和一著

 明王朝が倒れ、満州人が国号を清として漢土を次々と席巻していった時代に、台湾を中心とした南海王国が出現した。建国したのは、海賊で明の福州都督の鄭芝龍と日本人の田川マツの間に生まれた男。彼は日本名を「福松」といい、「鄭森」と名乗った後に、福州の皇帝・唐王隆武帝により「成功」の名を授けられ、「鄭成功」または皇帝の姓を持った殿様として「国姓爺」とも呼ばれるようになった。

 本書は、鄭成功の台湾設立を主軸に、明王朝滅亡の契機となった宦官の策略による名将・袁崇煥の処刑から、オランダから覇権を奪って立国された南海王国がわずか22年で再び清に下るまでを描いた壮大な歴史絵巻。中国、台湾のみならず、日本なども含め描かれる地域もアジア広域に及ぶ超大作だ。

 我欲に走る高官によって人間同士の信頼が失われたことで明王朝が滅亡したと考えた鄭成功が、「信」を掲げて南海王国を打ち立てた志の熱さが印象的。主要人物だけでも70人を超え、500ページ以上というボリュームで読み応えも重量級だ。 (小学館 2530円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも