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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

宇野書店(大塚)舌鋒鋭い批評家・宇野常寛氏プロデュース「私が好きな本と、これから読みたい本」が6000冊

公開日: 更新日:

あの宇野さんが本屋を始めたって」。そんな噂を耳にして2カ月余り。「あの宇野さん」とは、政治からサブカル、メディア、ライフスタイルまで舌鋒鋭い批評家の宇野常寛さん(46)のこと。「宇野書店」は、大塚駅すぐのビルの2階にあった。

 上がると靴箱が。靴を脱いだ足元にふかふかの人工芝が広がり、これいいなー。本が並ぶ木製の低い平台が点々。本棚が囲むフロア全体が見渡せる。しかも計50席ほどのベンチも。広い!

「150平方メートルあります。人文社会、カルチャー、建築・都市開発の3分野に絞り込んで6000冊。選書の基準? 私が好きな本とこれから読みたい本です」

 と宇野さん。去年、SNSに「本屋をやりたいな」とつぶやいた。それが不動産リブランディングを手がける東邦レオ(本社・大阪)の目にとまり、社長から「本屋やりませんか」と声がかかったという。すごいな。

「この店は、単に本を売る場所じゃないんです。古いビルを再生して、立地する街そのものの価値を高めるというビジネスモデルの実験的1号店なんですね。成功すれば宇野書店2号店、3号店をと」

「人と物事の偶然の出会いが一番贅沢」と宇野さん

 ここは東邦レオ東京支社の2階。書店単体の利益ではなく、地域全体の価値向上が目的の場だとのこと。「人と物事の偶然の出会いが一番贅沢。私自身、父が転勤族で、子ども時代は書店が少ない町に住んでいたときもあって。ここを本の存在、書かれていることと出会える、贅沢な経験ができる場にしたい」と宇野さんは続けた。

 平台に、自身の最新刊「ラーメンと瞑想」のほか、責任編集誌「モノノメ」ももちろんある。その周りに、安宅和人著「『風の谷』という希望」、福嶋亮大著「メディアが人間である」など。少し離れて「吉本隆明全集」。宇野さんの頭の中をそのまま可視化したようだ。岩波文庫、中公新書、講談社学術文庫、岩波少年文庫も半端なく揃っている。

「この2カ月で、よく売れたのは?」と聞くと、「鞍田崇さんの『民藝のインティマシー』や坂口安吾『戦争と一人の女』のコミカライズ版」と。

 ベンチに座って本を読める。ノートパソコンを広げる若者、ページをめくる親子連れ……。「知の公共空間」という言葉が頭に浮かんだ。セルフレジが静かに作動する。基本は無人で、宇野さんが店に来るのは週に1~2日。でもでも、無人の空間は思いのほか温かい。

「“宇野常寛がやっている店”ではなく、『宇野書店の宇野って、宇野さんのことだったの?』と言われるようになりたい」

◆豊島区北大塚1-15-5 東邦レオビル2階/JR山手線大塚駅北口・都電荒川線大塚駅前停留場から徒歩3分、地下鉄丸ノ内線新大塚駅から徒歩11分/午前10時~午後9時(土・日・祝日正午~午後8時)、イベント開催日は変動。SNS参照を。不定休。

私の書いた本

「庭の話」宇野常寛著

「家」族から国「家」まで、ここしばらく、人類は「家」のことばかりを考えすぎてきたのではないか。しかし人間は「家」だけで暮らしていくものではない。「家庭」という言葉が示すように、そこには「庭」があるのだ。(本文から)

「これからの社会に必要な公共の場所とは? を論じた本です。なので、この書店のマニフェストのようなもの。店に来るのとセットで、この本を読んでほしいですね」

(講談社 3080円)

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