著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。最新刊は「酒好きの記」(集英社新書)

(46)蕎麦屋からバーへ

公開日: 更新日:

 それから玉子焼き。やや甘めなところが特徴で、出汁の香り一辺倒の出汁巻き玉子とは趣が異なる。お銚子は、2本、3本と空になっていく。夕刻からの酒が勢いよく進むときというのは、楽しいものだ。分厚く、食感も確かな焼き海苔がまた、菊正宗に合う。

 もり蕎麦を1枚たぐる間も、またお銚子を追加して、都合6本。ひとり3本ずつを実にスムーズに飲み切って、店を出た。

 TBSのビルなど眺めながら駅の階段を降り、地下鉄に乗る。ものの15分で代々木上原に着いた。私にとっては行きつけだが、客人にとっては初めての店だ。この店の入り口には、わかりやすい看板がないから、客人はなんという店に入ったか、わからなかった。

 そこで、酒を注文し、客人もよく知る関西の著名なバーテンダーの話題などを挟みながら、さりげなく店名を出すと、客人は、ええ? ここがそうなんですかと、しばし絶句した。

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