(46)蕎麦屋からバーへ
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店をひとりで切り盛りしているバーテンダーは、この道40年以上のベテランで、バーテンダー界でも有名な人物。カクテルの技だけではなく、会話もキレがよく、媚びず、もちろん、威張らないから、とにかく居心地がいい。
店には音楽がかかっていない。店内にある音は、ミキシンググラスをかき混ぜるときの、グラスと氷が触れる音。シェーカーの中の氷がたてる大きな音。そして客同士、あるいは客と店主との会話の声だけである。ときおり、誰も話さないと、煙草に火をつけるためのライターの音が聞こえることもある。
マティーニ、マンハッタン、サイドカーと、スタンダードを立て続けに頼む。暗い店内では、バックバーを照らす灯りがボトルに反射して、グラスの中の酒に映る。ああ、きれいなだなと思うとき、まだまだいくらでも飲めそうな気がしている。
それは客人も同じだったようで、ふたりの酒は、ラストオーダーまで続いた。代々木上原の駅で、客人が千代田線のホームへ行くのを見送り、私は、小田急線ホームへの階段を上がった。


















