「文部省の研究」辻田真佐憲著
明治維新以降、日本の教育の中心的課題は「理想の日本人像」の探求だった。時代とともにそれは「独立独歩で生きていく個人」から、「天皇に奉仕する臣民」、そして「平和と民主主義の担い手」を経て「熱心に働く企業戦士」へと変遷していった。一方で、日本は世界に通用する普遍的な人材の育成と、共同体の歴史と責任を担う国民の育成というふたつの相反する志向をいかに調和させるかということに腐心してきた。
本書は、その日本の教育をつかさどってきた文部省(2001年以降は文部科学省)と「理想の日本人像」を通じて、近現代日本の教育史を明らかにする論考。さまざまな組織の介入を受け、現在も官邸主導に振り回される同省の歴史から日本の教育史の根幹を読み解く。(文藝春秋 920円+税)