堀尾正明が言葉を失った大滝秀治の“ふんどしトーク”
【堀尾正明の根掘り 葉掘り】
前回は下調べをして会話に臨むことの効果をお話ししましたが、今回は下調べだけではどうにもならない、生ものとしてのインタビューについてお話しします。
俳優の大滝秀治さんの出演作品は私もたくさん見ていましたし、エピソードも豊富な方ですので、いろいろなことをお聞きしようと念入りに準備をして、「スタジオパーク」本番に臨みました。大滝さんは戦争中、軍隊にいた経験がおありなので、その時代の話を振ると、あの独特の口調で「当時はみんなフンドシでな~」と、フンドシの思い出を語り始めました。「洗濯できなくて、フンドシにいろんなものがついてしまって汚いんだけどね~」と、昼食時にはそぐわない話を延々と始めてしまったのです。
局には「昼めし時に汚い話題はやめてほしい」など苦情の電話が殺到したそうです。私もこの話題を長く続けるのはふさわしくないと感じていましたし、他にも俳優としての話題をもっとお聞きしたかったので、「ところで――」と、何度も何度も大滝さんの話の腰を折り、なんとか別の話題に変えて聞き始めました。ところが、大滝さんはいつの間にか、またそれをフンドシの話題に戻してしまうのです。