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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第4回>絶食して撮った冒頭のラーメン、カツ丼シーンの迫力

公開日: 更新日:

 よく考えてみれば日本人の男性が、しかも炭鉱で働く男がそんなしゃれた手紙を書くはずはないのだが、そこは映画である。

 観客は途中から、頭の中に黄色いハンカチがある家を思い描きながらスクリーンに見入ってしまう。高倉健の魅力もあるが、山田洋次の映画作りのうまさが表れている。

 では、高倉健ファンはこの映画のどこに注目すればいいのか。

 何といっても冒頭のシーンだろう。出所したばかりの高倉が町の食堂に入って、大きな声で「ビールください」と注文し、ぐっと飲み干した後、メニューをじっと眺める。そして、絞り出すような声で「醤油ラーメンとカツ丼」と告げるのである。活字にしたら、何ということもないセリフだ。しかし、その言葉と食べる様子には何年も刑務所に入っていた男の生活が出ている。

 山田監督は高倉健が亡くなった直後のインタビューでこう語っていた。

「このシーンのために、健さんは1日か2日、食事を抜いていたと言っていました。そういうことをやる人なんです」

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