野地秩嘉
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野地秩嘉ノンフィクション作家

1957年、東京生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務などを経てノンフィクション作家に。人物ルポルタージュや食、芸術、文化など幅広い分野で執筆。著書に「サービスの達人たち」「サービスの天才たち」『キャンティ物語』「ビートルズを呼んだ男」などがある。「TOKYOオリンピック物語」でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。

<第7回>聞きどころは健さんが腹からしゃべる英語力

公開日: 更新日:

 永島は江利チエミのマネジメントをしていたことがあり、高倉とも親交があった。

「健さんの英語は発声がいいんだ。腹式呼吸でちゃんと発声している。外国のプロデューサーが彼をキャスティングするのはアメリカ人にとって聞きやすい音を出すことができるからだ。耳のいいミュージシャンと同じだよ、健さんの英語はね」

 永島から、その話を聞いた時、「なるほど、そんなものか」と思ったけれど、確かに、本人と相対して、声を聞いていると、腹の底から響く音でしゃべる。大きな楽器みたいな人だ。

 その高倉は以前、永島達司のことを「世界に出して恥ずかしくない日本人のひとり」と言い、「役をオファーされたことがある」と、こんな思い出話を語ってくれた。

「『ベスト・キッド』(1984年)という空手映画があるでしょう。監督は『ロッキー』を撮ったジョン・G・アビルドセン。アビルドセンは永島さんをよく知っていて、『高倉健を使いたい』と言ってきたんだ。永島さんは『健さん、東洋人の空手教師とアメリカの少年が空手を通して深い絆を結ぶ話ですが、やってみますか。子どもの役はスティーブ・マックイーンの長男がやるそうです』と言ってきた。僕(高倉)はやらせてくださいと返事したんです。が、もう一度、永島さんから連絡がありました。『健さん、すみません。あの話はなかったことにしてください。独立プロが製作することになりました。米国の独立プロはお金のことにルーズです。健さんに迷惑はかけられません』と。永島さんは他人に迷惑をかけることが嫌いな人だった。だから、海外の人に信用されたんだ」

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