親子共演 勸玄君の宙乗りは涙の美談はなく「祝祭」だった

公開日: 更新日:

 7月の歌舞伎座は、市川海老蔵が座頭。昼の部3演目のうち「加賀鳶」と「連獅子」で主役、夜の部「駄右衛門花御所異聞」では1人3役をつとめ、長男・勸玄君との宙乗りも話題で、まさに「成田屋の月」となった。最近の歌舞伎座では珍しく、夜の部は初日を待たずに完売。

 力が入っているのは夜の「駄右衛門花御所異聞」だ。明治まではよく上演されていたが、以後は途絶えていた芝居の復活上演。残されている台本を4人の作者が全面的に書き換え、演出した。成田屋としては、七代目團十郎以来、170年ぶり。いまの歌舞伎界では誰も見たことも演じたこともないのだから、実質的な新作で、こうすべきという型がないから、海老蔵は自由自在に、のびのびと、おおらかに演じる。

 歌舞伎の新作は、野田秀樹や宮藤官九郎など知名度のある演劇人が書いて演出するか、串田和美のような演出家が古典を新解釈するようなものが多く、歌舞伎と銘打ちながらも、歌舞伎の様式を使った「現代の演劇」が多かった。

 海老蔵が試みたのは、それとは逆のアプローチで、映像も含めた現代の最新舞台技術を使って、昔ながらの歌舞伎を再構築する。現代の作家が現代の感覚で書く新作の方が現代人には面白いはずだが、それと歌舞伎らしさの両立は難しく、実験作で終わることが多い。海老蔵もそういう試みを重ねてきたが、今月は、歌舞伎座のレパートリーとして今後も残るものを目指している。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異