著者のコラム一覧
ラリー遠田お笑い評論家

1979年、愛知県名古屋市生まれ。東大文学部卒。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。現在は、お笑い評論家として取材、執筆、イベント主催、メディア出演。近著に「松本人志とお笑いとテレビ」(中央公論新社)などがある。

新幹線内でもネタ合わせ M-1準優勝「和牛」の苦労と覚醒

公開日: 更新日:

「M―1グランプリ」で毎年のように優勝候補と騒がれているのが、水田信二(37=写真左)と川西賢志郎(33=同右)のコンビ「和牛」である。漫才のうまさには定評があり、プロの芸人たちからも絶賛の声が相次いでいる。

 しかし、彼らがここまでの地位を確立するまでには並々ならぬ苦労があった。2006年にコンビを結成した彼らは、大阪を拠点に活動していた。大阪のお笑いコンテスト番組でもある程度のところまで勝ち残るだけの力はあったのだが、決め手に欠けていた。

 殻を破るきっかけになったのは、水田の理屈っぽいところを前面に押し出したネタを作ったことだ。

 漫才の冒頭で、ツッコミ担当の川西が「頑張っていきましょう言うてやってますけども」と決まり文句を口にすると、ボケ担当の水田がすかさず「あ、待って待って」と話を遮り、「『頑張っていきましょう』って言った?」と詰め寄る。その前に「頑張っていきましょう」という言葉を発していないのに「『頑張っていきましょう』言うて」と言うのはおかしい、と疑問を投げかけるのだ。

 川西は必死で抵抗するが、仏頂面の水田はどこまでも追撃の手を緩めない。水田の生来の生真面目さと理屈っぽさが生かされた革新的な漫才だった。この形のネタが評価され、14年には全国ネットの漫才コンテスト番組である「THE MANZAI」で初めて決勝に進んだ。そこからは快進撃が続き、15~17年には3年連続で「M―1」決勝進出を果たした。

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