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「インドの奇跡」R・C・バルガバ著

 世界一の人口大国になったインド。その鼻息はますます荒い。

  ◇  ◇  ◇

「インドの奇跡」R・C・バルガバ著

 インドと日本といえば近年では何といってもスズキ自動車の先見の明。世界の自動車メーカーがインドなど歯牙にもかけなかった1970年代にインド進出を構想し、80年代から現地の国産化事業としてインディラ・ガンジー政権(当時)の肝いりで設立されたマルチ・ウドヨグ(現マルチ・スズキ・インディア)に積極的な支援を展開したのが、先年亡くなった鈴木修社長(当時)。本書はその時期から鈴木氏を支える役員だった著者が語る日印交流の現代史だ。

 マルチ社の事業は丁寧で綿密な日本型のものづくり精神をインドに広め、インドにおける製造業のあり方を大きく変える重要な役割を果たした。他方でインドの大胆で冒険をいとわない精神は鈴木社長の強い個性とも息の合ったケミストリーを発揮し、やがてマルチ社におけるスズキの出資比率は当初の26%からいまでは58%に達している。

 システムは優れているが荒海を生き抜くだけの強い個性がないといわれる日本企業にとって、マルチ・スズキ社の成功はなにより心強い先例。本書はその立ち上げから尽力し、2007年からは同社会長となった著者の語る貴重な教訓が満載だ。

(日本経済新聞出版 2640円)

「教育超大国インド」松本陽著

「教育超大国インド」松本陽著

 数学はインドで生まれたといわれる。理数系人材を次々に輩出し、アメリカのIT企業にもインド系の幹部が多い。本書はリクルートやベネッセで教育事業にたずさわり、インドで現地法人を立ち上げたあと、自身もインドで起業したという著者が語るインド教育事情だ。

 第一にインドの教育は徹底した詰め込み式。あまりのプレッシャーに入試の替え玉受験や不正カンニングも横行するほどだが、それというのもコンピューター科学などの専門教育を大学で受けると卒業後の人生がたちまちバラ色。エリート校のインド工科大の場合、卒業生の平均年収が2000万円、3年前には初任給8000万円を記録した学生までいるという。

 しかし実は教育の質が整っておらず、卒業生の質の低い新設校も少なくないのが実情だ。トップエリートの質は高いが、教育格差がきわめて大きく、全体の民主化は途上国ということだろう。生徒が籍だけ置いて、実際は朝から受験予備校に毎日通うという「ダミースクール」の話などは相当な問題といわざるを得ない。それでも幼いころから徹底して議論の癖をつけられるインドは侮れない。

(星海社 1430円)

「インドの野心」石原孝、伊藤弘毅著

「インドの野心」石原孝、伊藤弘毅著

 人口14億で世界一となったインド。高度成長期の日本を思わせる経済の躍進と独自路線をひた走る外交。欧米の大企業トップにもインド系が増えたことと併せて、いまこそ注目しないわけにはいかない。本書は朝日新聞の前・現2代のニューデリー支局長による共著でインドの多彩な側面をリポートする。

 ただし堅苦しい話からは入らない。たとえば日本のアニメが大好きな若者が日本食は「味がないから苦手」という。それはスパイスが効いてないという意味。しかし本場インドに果敢に挑んだCoCo壱番屋によると辛さについてはインド人の標準は「オリジナル」か「1辛」で、せいぜい「3辛」という。言語も風土も多様なインドでは好みも多様なのだ。

 その一方でインドを取り巻く国際情勢もむろん見渡される。米ロ中に対して一歩も引かない姿勢は知られているが、隣国パキスタンとの犬猿の仲はあいかわらず悩みの種。

 昨年の4月にも人気の観光地カシミール地方でヒンズー教徒を狙った銃撃事件が起こり、若い夫婦ら20人以上が殺害された。両国とも核兵器保有国。いつ何時、第3次世界大戦につながりかねない戦乱が起こらないとも限らない地政学リスクも抱えているのがインドなのだ。

(朝日新聞出版 990円)

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