著者のコラム一覧
スージー鈴木音楽評論家

1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966-2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

もっと曲そのもの、音そのものを語ったれよ

公開日: 更新日:

なぜ今ビートルズを「ゼロからぜんぶ聴く」のか②

 昨日に引き続き、なぜ今ビートルズを「ゼロからぜんぶ聴く」のかについて。理由の第2は、ちょっと禅問答のようになりますが「ゼロからぜんぶ聴くことが難しくなっているから」。

「世界でもっとも情報があふれ返っている音楽家」と言っていいでしょう。本屋に行っても、決して広くはない音楽本の棚に、ビートルズ本がずらりと並んでいます。

 読んで驚くのは、その細か過ぎる内容。

「この曲は何月何日に、誰がどんな楽器を担当し、何テイク録られて、そのうち何テイク目のどことどこが採用された……」みたいな、おそらく当のメンバーでさえ、忘れ去っているだろう情報が事細かに載っています。

 つまり、ビートルズ本の多くは、ビートルズのマニア=「ビートルマニア」向けに書かれているのです。

 そして、その情報のトリビアぶりを競っている。「一般にギターソロは7テイク目が採用されたと思われているが、実は11テイク目だ」とか。

「今、ゼロから聴く人のガイドではないなぁ」とも思ってしまうのです。あと「マニアック過ぎて、ゼロから聴きたい人を遠ざけてしまうよな」とも。

 さらに「トリビアはいいけど、もっとシンプルに曲そのもの・音そのものについて語ったれよ」とも思ってしまう。

 しょせん私は「ビートルマニア」の端くれの端くれ程度なので、トリビア情報には、ぜんぜん詳しくない。でもその分、40年以上前、今と比べたら、ほとんど情報がない中、東大阪(私の出身地)から、リバプール(4人の出身地)の路地裏に分け入るように、先入観なしで聴き込んで聴き込んで感じたことを、今でもリアルに覚えている。

 という独特の立場から「今、ゼロから聴く人のガイド」になりたいと考えたのでした。

 ということはつまり、この連載は、マニアの方には大いに食い足りないものになると思います。すいませんね、どうも。

 ただ、マニア向け情報は、最近のビートルズ本(だいたいお高い)にお任せして、日刊ゲンダイ(安い!)からは、令和の世に「ゼロからぜんぶ聴く」ために、曲そのもの・音そのものの楽しみ方をお知らせできればと思っています。

 そして、本連載をきっかけにして、読者の方々が、ビートルズ沼にのめり込み、そしてその中の何%かが、本気のビートルマニアになってくれればいいな。

 だって、財津和夫も杉真理も、最初はゼロから聴いたのですから。 (この項つづく)

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【連載】スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ

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