中村屋次男と名門・成駒屋長男 背負っているものが違う?

公開日: 更新日:

 今月の歌舞伎座は「十八世中村勘三郎七回忌追善」。その次男の七之助が夜の部「助六曲輪初花桜」で大役、揚巻に抜擢された。

 戦後、歌舞伎座で揚巻を演じた女形は物故者では、六代目歌右衛門、七代目梅幸、七代目芝翫、四代目雀右衛門、現役の役者では藤十郎(扇雀時代)、玉三郎、菊五郎、福助、雀右衛門しかいない。菊之助は海老蔵の襲名のときに地方の劇場で演じただけだ。

 七之助はこの名女形たちの系譜に加わったことになる。揚巻は、何よりも、吉原随一の傾城としての存在感が重要だが、残念ながら七之助にはそれが弱い。どこか遠慮している。比べては気の毒だが、玉三郎が花道に出た時に、客席にじわっと広がるどよめきやため息といったものがなかった。「初役としてはよくやった」というレベルである。

 むしろ、揚巻の妹分である白玉を演じた児太郎のほうが、役を生きている。児太郎の家、歌右衛門家こそが五代目以降、揚巻を演じてきた家で、当然、彼もいつかは揚巻をやると心に秘めているはずだ。悠然とした佇まいのなかに、冷めた炎が感じられ、七之助よりも存在感が際立つ瞬間があった。名門・成駒屋の長男と、中村屋の次男とでは背負っているものが違うと感じさせる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 2

    巨人の“お家芸”今オフの「場当たり的補強」はフロント主導…来季もダメなら編成幹部の首が飛ぶ

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  5. 5

    国民・玉木雄一郎代表の“不倫相手”元グラドルがSNS凍結? 観光大使を委嘱する行政担当者が「現在地」を答えた

  1. 6

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  2. 7

    若林志穂さん「Nさん、早く捕まってください」と悲痛な叫び…直前に配信された対談動画に反応

  3. 8

    米倉涼子に降りかかった2度目の薬物疑惑…元交際相手逮捕も“尿検査シロ”で女優転身に成功した過去

  4. 9

    国民民主から維新に乗り換えた高市自民が「政治の安定」を掲げて「数合わせヤドカリ連立」を急ぐワケ

  5. 10

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで