「無症候性心筋虚血」はいきなり心臓突然死を招く危険あり
今年5月、91歳の上皇陛下が心臓の検査を受けるために東京大学医学部付属病院に入院し、「無症候性心筋虚血」と診断されました。胸痛などの自覚症状はないものの、一定の運動負荷がかかると心筋への血流が不十分になる病態で、見逃されて診断が遅れると心筋梗塞や心不全につながるリスクがあります。
上皇陛下は2012年に狭心症で冠動脈バイパス手術を受けられた後、22年には三尖弁閉鎖不全による右心不全と診断され、薬物治療を続けていらっしゃいました。退院後はこれまでの治療に加えて新たな薬物治療を始め、過度な運動負荷を避けながら日常生活を送られているそうです。また今年7月には上室性不整脈が確認されて心臓への負荷を和らげる薬の服用を開始したといいます。
無症候性心筋虚血は、とりわけ糖尿病の患者さんに見られやすい病態です。一般的に、心筋への血流が不足すると、血流が断たれたところの心筋が壊死してしまうことで痛みを生じます。しかし、糖尿病の患者さんは血糖値が高い状態が続いて細かい血管の血流が悪くなったり、体内に余っているブドウ糖の代謝産物が蓄積するなどして神経細胞が障害され、痛みやしびれを感じづらくなります。そのため、心筋虚血が起こっても痛みなどの症状が現れにくいのです。


















