勘三郎なきコクーン歌舞伎 役者も脚本もいいが熱狂消えた

公開日: 更新日:

 今年のコクーン歌舞伎は「切られの与三」。女形の中村七之助(35)が与三郎を演じ、コクーン歌舞伎初出演の中村梅枝がお富という配役。瀬川如皐の「与話情浮名横櫛」を、「木ノ下歌舞伎」を主宰する木ノ下裕一が大胆に脚色しており、実質的には新作といっていい。

 原作は長い芝居で、全部が上演されることはない。与三郎とお富が出会う場面と、「しがねえ恋の情けが仇」のせりふが有名な再会の場面だけが頻繁に上演されるが、今回は再会後の二転三転する物語までが上演される。

 ストーリーは面白いし、役者もいい。しかし、劇場にはかつてのコクーン歌舞伎にあった熱狂はない。「クール歌舞伎」とでも呼べばいいのだろうか。熱狂すればいいわけではないから、冷たさが狙いだというなら、それはそれでいいのだが。

 演出・美術は串田和美。コクーン歌舞伎は、古典をいったん壊して再解釈して提示するのをコンセプトとして始まった。勘三郎がいた頃は、串田が壊そうとするのに勘三郎が抵抗し、そのぶつかり合いがエネルギーとなって傑作を生んできた。勘三郎亡き後は、若い作家を起用し、串田と歌舞伎役者との三つ巴から何かを生み出そうとしているようだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    どこよりも早い2026年国内女子ゴルフ大予想 女王候補5人の前に立ちはだかるのはこの選手

  4. 4

    「五十年目の俺たちの旅」最新映画が公開 “オメダ“役の田中健を直撃 「これで終わってもいいと思えるくらいの作品」

  5. 5

    「M-1グランプリ2025」超ダークホースの「たくろう」が初の決勝進出で圧勝したワケ

  1. 6

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 7

    福原愛が再婚&オメデタも世論は冷ややか…再燃する「W不倫疑惑」と略奪愛報道の“後始末”

  3. 8

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  4. 9

    匂わせか、偶然か…Travis Japan松田元太と前田敦子の《お揃い》疑惑にファンがザワつく微妙なワケ

  5. 10

    官邸幹部「核保有」発言不問の不気味な“魂胆” 高市政権の姑息な軍国化は年明けに暴走する