エロスとタナトス…三島文学に夢幻能で迫る「豊饒の海」

公開日: 更新日:

 能舞台のような簡素な素舞台。ロンドン演劇界の俊英、マックス・ウェブスターの演出は夢幻能のように光と影の陰影の深さを際立たせた静謐な日本の伝統美を基調とした。

 20歳で夭逝した清顕と醜く老いさらばえ死んでいく本多の虚無は三島のエロス(生)とタナトス(死)の結実だろう。

 存在感に満ちた演技で清顕の虚無を体現した東出。青年時代の本多を大鶴佐助、中年時代の本多を首藤康之、そして老年時代の本多は笈田ヨシが、それぞれ独自の個性を発揮し見事に演じ切った。

 この小説を書き終えた三島はその足で陸上自衛隊市ケ谷駐屯地に赴き、割腹自殺を遂げる。

 三島が作品に込めた「美しい日本」と、どこぞの首相が唱える「美しい国」の絶望的な乖離を泉下の三島はどう思うだろう。

 12月2日まで、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA。

 ★★★★

(演劇ジャーナリスト・山田勝仁)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 2

    川口春奈「食べ方が汚い」問題再燃のお気の毒…直近の動画では少しはマシに?

  3. 3

    あの人「なんか怖い」を回避する柔らかな言葉遣い

  4. 4

    自分探しで“変身”遂げたマリエに報道陣「誰だかわからない」

  5. 5

    (1)高齢者の転倒は要介護のきっかけになりやすい

  1. 6

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 7

    「誰が殺されてもおかしくない」ICE射殺事件への抗議デモ全米で勃発

  3. 8

    解散総選挙“前哨戦”で自民に暗雲…前橋出直し市長選で支援候補が前職小川晶氏に「ゼロ打ち」大敗の衝撃

  4. 9

    業績悪化で減収減益のニトリ 事業の新たな柱いまだ見いだせず

  5. 10

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網