「主戦場」デザキ監督 右派の一貫性のなさを見せたかった

公開日: 更新日:

 慰安婦問題をめぐる論争を描いた映画「主戦場」が大ヒットしている。4月の公開以来、インディペンデントのドキュメンタリー映画としては異例のロングラン上映中だ。出演している右派論者の一部が上映中止を求める騒ぎを起こしたことも、逆に人気に火をつけた。話題の問題作について、日系2世の米国人監督であるミキ・デザキ氏が語った。

  ◇  ◇  ◇

  ――製作したキッカケを教えて下さい。

「主戦場」を作った理由のひとつが、日本と韓国の間に横たわる問題の解決を手助けすることでした。両方の国民が慰安婦問題についてより深く理解すれば、互いに憎むことなく、もっと建設的な話し合いができると思ったのです。

  ――なぜ、あえて日韓関係の“しがらみ”を象徴する慰安婦問題を取り上げたのでしょう。

 もともとユーチューバーとして、レイシズム(人種差別)やセクシズム(性差別)に関する動画作品をネット上に発表していたころ、ある動画がキッカケで、いわゆる「ネトウヨ」からバッシングを浴びました。そして、元朝日新聞記者の植村隆さんも慰安婦問題で自分と同じようにバッシングされていたのを知って、「批判している人は、なぜこの問題にフタをしようとしているのか」と興味を抱いたのです。

  ――日本では韓国人や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチがなくなりません。

 日本のメディアが慰安婦問題を扱う時に、断片的な情報しか伝えていないことが理由のひとつでしょう。米国のジョージア州で少女像が建てられたとき、日本の領事館がすごく批判しました。ところが、なぜ設置を止めようとしているかは、日本のニュースにあまり出てこなかった。建てるという事実は報道されるけど、日本政府が止めようとしていることは言わない。慰安婦はデタラメだから止めようとするのが当然と思われているのです。日本のメディアは「少女像を建てる=悪」というフレーミングをしていると思います。

  ――断片的な情報を流すメディアの責任も大きいですね。

 だから、慰安婦問題についてより深く理解することが大切なのです。日本人と韓国人がある種の友人関係になって、健全な議論をするべきだと思います。憎んでいる相手とディベートしても、耳を傾けることはできませんからね。

  ――映画では、慰安婦に否定的な右派論者、いわゆる「歴史修正主義者」の主張と、それとは真逆の立場の左派論者の主張がインタビューを通じて描かれています。編集するのに苦労したと聞きました。

 何をどのようにまとめるか、本当に難しい作業でした。2時間の映画では、慰安婦問題の全てを描けませんからね。主な作業は、何が今重要か、何が起こっているのか、なぜ慰安婦問題がこれほど大問題なのか、何がこの問題を複雑にしているのかを明らかにすることでした。多くの情報と問題の背景、慰安婦像を巡って日米韓で起きていることを盛り込もうと試みました。

  ――議論の整理ですね。

 そうです。さらに、右派の偽善や一貫性のなさを見せたかった。彼らはインタビューの中で、自らを批判することも時々口にしました。何を言いたいのか理解するのに苦労することもありましたが、「さっき言ったこととダブルスタンダードだな」とチェックしようと努めていました。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  3. 3

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  4. 4

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  5. 5

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  1. 6

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  2. 7

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  3. 8

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  4. 9

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  5. 10

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩