あえて参院選前に公開 映画「新聞記者」なぜリスク取った

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 参院選(7月4日公示―7月21日投開票)が迫る中、安倍政権に渦巻く数々の疑惑や官邸支配に焦点を当てた社会派サスペンス映画が28日に公開された。東京新聞社会部の望月衣塑子記者の著書を原案にした「新聞記者」だ。

 企画始動から2年弱。現在進行形の政治事件をモデルにした作品の上映は異例だ。官邸が巧妙に仕掛ける同調圧力によって社会全体が萎縮する中、なぜリスクを取ったのか。エグゼクティブプロデューサーの河村光庸氏に聞いた。

 ――参院選目前の公開です。あえて、このタイミングにブツけたのですか。

 政治の季節をもちろん意識しています。たくさんの人に見てもらいたいので、参院選を狙いました。この6年半で民主主義的な政党政治は押しやられ、官邸の独裁政治化が相当に進んでいる。自民党員でさえも無視されている状況です。にもかかわらず、安倍政治を支えている自民党員、忖度を強いられている官僚のみなさんには特に見てもらいたいですね。単館上映で小さくやると逆に潰されてしまいかねないので、全国150館規模で公開します。

 ――製作のきっかけは?

 かなり前から政治がおかしい、歪んでいると感じていたのですが、異常だとまで思うようになったのは2年ほど前。伊藤詩織さんが告発した事件がきっかけです。

 ――安倍首相と親密な関係にある元TBSワシントン支局長の山口敬之氏に持ち上がったレイプ疑惑ですね。詩織さんの訴えで警察が動き、山口氏は帰国直後に成田空港で逮捕されるはずが、執行直前に逮捕状が取り下げられた。

 逮捕状取り下げなんて、通常はあり得ないでしょう。官邸は身近な人間や取り巻きを守るために警察まで動かすのかと。衝撃でしたね。この国では警察国家化も進んでいる。官邸を支える内閣情報調査室(内調)が公安を使ってさまざまな情報を吸い上げ、官邸はそれを政敵潰しに利用しています。

 加計学園疑惑をめぐり、「あったことをなかったことにはできない」と告発した前川喜平元文科次官の出会い系バー通いが官邸寄りの新聞にリークされたり、昨年9月の自民党総裁選で対抗馬に立った石破茂さんの講演会に内調職員が潜り込んで支援者をチェックしたり。この作品で内調を取り上げたのは、安倍政治の象徴であると同時に、最も触れられて欲しくない部分ではないかと感じたからです。

 ――望月記者の著書が原案ということで配役が注目されましたが、ヒロインは日本人の父親、韓国人の母親を持つ米国育ちという設定。実力派女優として知られる韓国のシム・ウンギョンさんが演じていますね。

 この2、3年間で現実に起きた問題を生々しく展開したかったので、当初はリアルな事件をリアルに描こうと思い、実名を使うことも考えたのですが、そうすると作品としての広がりがなくなる。個人史としてではなく、テーマとして官邸支配とメディアの萎縮を扱いたかった。映画ならではの表現の自由を生かして普遍性を持たせたかったので、フィクション仕立てにしました。

 一方で、現実にリンクしたリアルなイメージを出すために、望月さん、前川さん、朝日新聞の南彰記者(新聞労連委員長)、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーさんの4人が安倍政権の実態や報道のあり方について議論している映像を劇中で流しています。

 映画の設定としては、男女が出てくると作品が盛り上がるし、観客の期待値も上がる。ですが、どうしても恋愛関係の進展も期待されてしまう。その点で、シム・ウンギョンさんは男女関係という枠組みを乗り越えられる女優で、役柄にぴったりとハマった。記者と官僚の緊張感を豊かな表現力で演じてくれました。

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