著者のコラム一覧
ダンカンお笑いタレント・俳優・放送作家・脚本家

本名・飯塚実。1959年、埼玉県毛呂山町生まれ。落語家を目指し立川談志に弟子入り。「立川談かん」として活動した後、たけし軍団入り。お笑いタレント、俳優、放送作家、脚本家と多才で、現在はTAPの専務取締役。

たけしさんが棺に腰かけ…お父ちゃん、死んでよかったねェ

公開日: 更新日:

 カタカタ……カタン!! プ~ン、この線香のにおいは? あ、やっぱりそうか……1990年6月2日に父親(飯塚芳三=享年57)が逝った……。ここは翌日に葬儀場での告別式を控え、埼玉・毛呂山町にある実家で通夜が営まれている最中である。

「お父ちゃん、ありがたいねェ、こんな片田舎にたけしさんをはじめ、軍団のみんながわざわざ線香をあげに来てくれたんだから」と棺の中で眠る父に、俺が心の中で話しているその時、たけしさんがいきなり棺を椅子がわりに腰かけると、「オイ、ダンカン、おまえんちはどーなってんだ? 俺がわざわざ来たのに、一家の長は挨拶ひとつにも、顔出ししねえのか!?」、そして間髪を入れず、「下! 下! 尻の下!」「カンオケでしょ、それー!!」と一斉につっ込む軍団のみんな……。

 この酷いなんて超越した気遣い、そして優しさ……俺、それだけでもう涙がドッとあふれそうになっていたのだ。きっと、自分の棺に腰かけられたお父ちゃんも「やったー! 世間広しといえどもビートたけしに自分が入ってる棺に座られたのは自分だけだよ!!」と自慢げな顔をしているんだろうな……と思ったのだった。さらに、父親を送る儀式はヒートアップし、最終的には棺から引っ張り上げ、かんかんのう(落語の「らくだ」でフグにあたって死んだ男をかついで踊らせる踊り)を踊らせようとしたんだから、一般世間では、ちょいと信じがたい話かもしれないのだ。ちなみに、母親も大感激して「お父さん、ホント死んでよかったねェ」と涙していた。我が家はどうなってんだァ!?

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