クラシック長年封印 原田悠里さん挑戦決意にカラスの名曲

公開日: 更新日:

「ある晴れた日に」(マリア・カラス)

 旅情演歌の第一人者といえばこの人、原田悠里さん。その歌声は声楽で鍛えたもので、世界的なソプラノ歌手、マリア・カラスに魅了されたひとりだ。

 昨年10月1日に行ったコンサート「歌語の浪朗唱」で「明治の幻燈 蝶々夫人」をやりました。二葉百合子先生から教わった歌謡浪曲、北島(三郎)先生の助言でここまでこられた演歌、そして歌謡曲、オペラで構成しました。オペラで歌ったのがマダムバタフライ、「蝶々夫人」の「ある晴れた日に」なんです。

■美空ひばりさんに憧れて歌手を志すも…

 熊本県天草の子供時代は、近くにあった映画館から美空ひばりさんの時代劇の歌が流れてきたのね。だから「港町十三番地」とか「波止場だよ、お父つぁん」を聴いて育ち、その頃から将来は歌手になると決めていました。

 でも、父の口癖は「学校の先生になれ」。それで学校の先生にならないことには歌手にもなれないと思い、鹿児島大学教育学部の音楽科に入り専攻したのが声楽です。クラシックなんてまったく知らないまま。私は地声が低いのに、先生に言われてソプラノをやることになったのね。ソプラノは声が高いからやるのではなく、声質と訓練次第なんですね。ひばりさんしか聴いたことがなかったのに大学で初めてオペラに触れ、マリア・カラスに出会うわけです。

 この頃、歌ったのは難役といわれる「魔笛」の夜の女王のアリア、それからプッチーニの「トスカ」「蝶々夫人」。

「蝶々夫人」は珍しく日本(長崎)を舞台にしたオペラです。悲劇的なマダムバタフライの人生を描き、その中で歌われる「ある晴れた日に」は波瀾万丈だけど、希望や憧れを歌った名曲。それを歌うマリア・カラスのソプラノには魅せられました。

  ■  ■  ■

 その意味で、ひばりさんとカラス――この2人が私の原点です。2人には共通点も多い。カラスはアメリカで生まれ、ギリシャに渡りイタリアに移って、キャリアを積んでソプラノ歌手として絶大な人気を得ました。当時廃れかけていたオペラに命を吹き込み、まるでスパゲティを食べるのと同じような次元で大衆の心をワシづかみした。それはひばりさんの歌が戦後の復興を願う日本人の心をとらえて離さなかったのと同じだと思います。

 人生もすさまじいですよ、ひばりさんもカラスも。カラスは世界的な大富豪のオナシスと出会います。イタリア人実業家のメネギーニと結婚していたカラスが、船上で出会ったオナシスと恋に落ちて愛に目覚める。そしてオナシスの庇護の下、オペラに専念する。

 ところが、オナシスが突然ケネディ大統領夫人だったジャクリーン(ジャッキー)との結婚を発表する。お金も名声も美貌も愛も手に入れたカラスが悲しみのどん底に突き落とされ、その頃から歌手としての生命線の声も衰えていく。

 そんなカラスがなんと日本でひばりさんと交錯します。1973年。ひばりさんにとって大変な年でした。大阪フェスティバルホールでひばりさんのコンサートが2日間予定されていたのに、弟の問題ですべての公営施設から締め出されキャンセルになった。紅白出場も辞退します。その2日間の1日に「マダムバタフライ コンテスト」が開かれ、カラスが来日して「ある晴れた日に」を歌いました。そのことは97年に出した「ひばりとカラス」という本で書きました。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 3

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  4. 4

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  5. 5

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  1. 6

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  2. 7

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  3. 8

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  4. 9

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  5. 10

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも