C・イーストウッド監督 最新作で描く“今ここにある危機”
その可能性として、メディアリンチのみならず、SNSによって、デマや臆測でも簡単に拡散し「炎上」してしまうネット社会の普及を挙げ、こう続けている。
「人は情報をきちんとまとめて考えない。事件の6年後に真犯人が現れ、逮捕されたのに、それをリチャードの潔白とつなげない」
一度疑われたら、それが根も葉もない事実無根であったとしても独り歩きし、名誉挽回されないのが現代社会。四六時中スマホ漬けの現代人をイーストウッドはクレージーと訴えた。
このほど都内で開かれた一般試写会では、報道被害を考えるイベントもあり、94年の松本サリン事件の第一通報者で報道被害を受けた河野義行氏が「事件の構図も展開も松本サリン事件とまったく一緒」と語っていた。この夏、2度目の東京五輪が開催される日本では、メディアやSNSのみならず、テロ対策に躍起の捜査機関から嫌疑をかけられる可能性も少なくない。その恐怖と、それにリチャード・ジュエルがどう立ち向かったかを描いた物語は実にリアル。今ここにある危機への警鐘のようだ。17日から全国公開。