中野純(闇案内人)

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11月×日 今夜は墨田区主催のワークショップで、路地裏の暗闇を楽しんでもらった。東京の町の闇歩きは問題ないが、山のミッドナイトハイクは参加者が急減した。クマ報道の影響だろう。高級酒をちびちび飲むように、遥か前に読み始めた吾峠呼世晴著「鬼滅の刃」(集英社 484円~)を今もちびちび読み進めているが、今年の東北などのクマはまさにこのまんがの鬼だなと思う。いつどこに現れて惨劇が起こるかわからない。報道はあおりすぎだが、西多摩の私の家にもクマが迫っていて他人事ではない。

11月×日 月刊「散歩の達人」に連載中の「地獄さんぽ」の取材で、昨日は板橋、今日は中伊豆へ。今年は久しぶりに地獄やあの世にとっぷり浸かっている。資料として買った村上晶著「賽の河原」(筑摩書房 1012円)をこれまたちびちび読んでいる。何本かの連ドラを同時に追うように、何冊かを同時にちびちび読むのが好きだ。

11月×日 夫婦で運営している少女まんが館は冬期休館中。まんがに囲まれて育った娘に勧められたpanpanya著「商店街のあゆみ」(白泉社 1320円)がよかったので、最新刊「つくもごみ」(白泉社 1430円)を買ってちびちびやっている。ギリギリありそうで絶対ないことを描く身の丈ファンタジーの世界。人物、とくに顔をしっかり描いて、背景はちゃんと描かないことが多い少女まんがに対し、下描きでやめたみたいな影の薄い人物と、じっくり描き込んだ背景や物品が特徴。登場人物が肉体を感じさせず、精霊のよう。顔をしっかり描かないどころか、四角い頭ののっぺらぼうだったり、首から上が見切れていたりもする。私はふだん、人間自身よりも人間が置かれている環境に興味が向くので、この作風はとても心地よい。

12月×日 「賽の河原」読了。あの世を失うのは、死ぬよりも辛いことだと思う。あの世を信じる必要はないが、少しでもイメージできるほうがいいという筆者に深く共鳴する。生活にあの世をとりもどそう。

【連載】週間読書日記

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