二重声になってもうダメだと…尾崎亜美さん声帯嚢胞の切除手術を振り返る

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尾崎亜美さん(シンガー・ソングライター/68歳)=声帯嚢胞

 2023年3月、声帯にできた袋状の腫瘤「声帯嚢胞」を切除する手術をしました。歌手という仕事柄、声帯を傷つけるのは不安でしたし、“おもしろい声”はしていてもこの声を大事にしてきたので、だいぶ引き延ばしてからの手術でした。

 じつは最初に声帯嚢胞とわかったのは、今から14~15年前のことなのです。もともと扁桃腺をよく腫らすタイプですが、それとは違う声がれや声の出しにくさがあって、かかりつけのクリニックを受診したところ大きな病院を紹介されました。そこで「声帯嚢胞です。自然治癒はしないので手術するしかありません」と当時から言われていました。

 でも、まだ手術の成功率が今ほど高くはありませんでしたし、「声帯嚢胞、だからすぐ手術」というスピード感にもついていけなくて、喉専門の名医を探してセカンドオピニオン、サードオピニオンを試みました。

 その結果、「いったん治療してダメなら手術にしましょう」と言ってくださった先生のところへ通うようになって、ステロイドの薬を飲みながら、なんとかコンサートを続けるようになりました。

 これはもうダメだと思ったのは、2022年です。二重声(音程の違う2つの声が重なって出る状態)になったのです。薬も効いたり効かなかったりで、長いツアーの間中、ステロイドを使い続けて体にも負担がかかっていました。

 かかりつけのクリニックの先生に相談すると、「この先生が今、日本で一番信頼できるから」と、14~15年前に「手術するしかありません」と言われた病院の先生を再び推薦されました。念のためにいろいろな人から名医の情報を集めたところ、「この先生だったらいいと思う」という先生が、クリニックで紹介された先生だったのです。ちょうど一緒にコンサートに出ていたユーミン(松任谷由実)からも同じ先生の名前が出てきたので、「もうこの先生にお任せしよう」と決心がつきました。

 説明を聞いた限りでは、復帰までそんなにかからない印象でした。でも、いざ手術をしてみたら思いのほか嚢胞が大きく育っていたらしく、術後のリハビリは大変でした。

 術後1週間は声出し絶対禁止。次の1週間はゆるいハミングがOKになりました。特殊だったのはその次の週です。「む」か「も」から始まる言葉をゆっくり平坦に発声することを1時間に1回は必ずやることを義務付けられました。たとえば、「モーモーターローウー」とか「ムーラーマーツーリー」というように一定の音程で平たく発声します。「む」や「も」は声帯へのアタックが少ない音だからで、その時期は常に「む」や「も」がつく言葉を探していましたね(笑)。

 ちょうど野球WBCが開催していた頃で、手術前に購入したチケットがあったため、「大声は出さない」と先生と約束して観戦に行ったんです。そこでも、1時間に1回「む」か「も」から始まる発声をしましたよ。ざわざわしている球場でも、「ムーラーカーミーサーマー」と平らに発した声は逆に目立って注目されました(笑)。

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