「お金のズレ」より「感情のズレ」が社会的行動を動機づける
人間が何かを学ぶとき、「報酬予測誤差」が最も重要だと考えられてきました。「報酬予測誤差」とは、予想していたご褒美(お金など)と実際にもらえたご褒美のズレのことです。
しかし、私たちは社会の中で、お金の損得だけでは説明ができない行動を取ることが珍しくありません。不公平なことをされると、金銭的な動機がなくても怒りをあらわにしたり、態度をあらためたりします。この点を詳しく研究したブラウン大学のヘフナーらの研究(2021年)があります。
彼らは、「感情予測誤差」――分かりやすく言うなら“気持ちのズレ”も報酬と同じ、あるいはそれ以上に私たちの行動の学習に関わっているのではないかと考えたのです。
実験は、1000人を超える被験者に金銭が伴う社会的なゲームをプレーしてもらいました。このゲームは、匿名(誰か分からない)のパートナーが、被験者にお金を分ける提案をするというもので、例えば、合計1ドルを分け合うとき、匿名の相手が90セントを取り、自分には10セントだけを渡すといった非常に不公平な提案も行われるゲームです。


















